酒とバラの日々

人生は生きるに値するか?
それはひとえに肝臓にかかっている

ウィリアム・ジェームス
( アメリカ合衆国、哲学者・心理学者 )

先日、『インプリメーレのプリラジ!』の収録にゲストとして参加した。近頃は「あっ、会計はedyでお願いします」や「あっ、レシートください」しか言葉を発していない日も多く、まともに会話が成り立つだろうかと不安でいっぱいだったが、指揮者の迎さんのガイドもありなんとか乗り切れた気がする。笹に飾る短冊には『もう少しうまく喋れるようになりたい』と書きました。嘘です。本当は『50億円欲しい』と書きました。僕が話している回は以下のリンクより聞けます。どうぞお暇な時にお聞きください。あとチャンネル登録もよろしくお願いします。頼む。

収録後も一時間ほど楽しく話をしており、好きな音楽の話になった。「酔っ払った状態でイヤホンしてテクノとか聴きながら部屋で一人踊るのとか超好き」、という主張をしたら、迎さんに笑われた。一人の部屋で酔ってノリノリになったり踊ったりしない?しないの?マジで?するよね?

ということで今回は C2H6O 、これすなわちエチルアルコール、要はお酒の話をしたいと思う。

インプリメーレと酒

インプリメーレのメンバーはお酒好きが多い。過去の演奏会では2回、『お酒ソング・コレクション~酔奏楽の為の~』 を演奏している。カンパーイ!ってやつだ。弊団体では本番前に2泊3日の合宿を行っているが、二日目の夜の宴会がワイワイしており楽しい。皆、お酒好きが過ぎる。

前回の演奏会においてHr.のパート紹介を行ったときに「美味しいお酒が飲みたい。だから演奏会に出る。いわば演奏会は0次会」と言ってしまい、顰蹙を買ったのは記憶に新しい。演奏は本気でやっております。石を投げるのはおやめください。どうか!お客様!何卒!何卒!

インプリメーレはそういう感じで、基本的にゴキゲンな雰囲気のバンドとしてやっている(と僕は思っている)。故にお酒との親和性が高い。お酒を飲めば更にゴキゲンになれるからね。とはいえ、皆さんいい大人なので、ベロンベロンになってメルトダウンということが無いというのが偉い。

音楽と酒

弊団体に限らず吹奏楽パーソンはお酒好きが多い。というか、音楽好きと酒好きの親和性は妙に高い気がする。これは何故だろうか。

それを調べるため、健康な成人男性に酩酊状態と素面状態でそれぞれ同じ音楽を聴いてもらい、没入の度合いをヒアリングする比較実験を行った。すると、なんと被験者の100%が「酒のある方が没入できる」という回答をし、その没入度合いは平均2.45倍という驚くべき結果が得られたのだ!

この結果は何を示すのだろうか? アルコールは認知能力の低下とそれに伴う感情発露の容易化をもたらすことが知られている。泣き、笑い、怒りながらフラフラしている人々のことを考えればピンとくるだろう。泣き上戸、笑い上戸という言葉もある。この現象は、アルコールで理性が緩み、感情が剥き出しになっているところに、感情に働きかける音楽が沁みやすくなっていると考えられる。音楽を聴く前に、軽く一杯ひっかけてから、という行動は案外理に適っているのである。

とはいえ、奏者が演奏前に呑むのはどうなのだろうか。このことについては、本来の貴方の演奏をするためにはオススメしない、と述べておきたい。体の緊張が解れるメリットもあるが、それ以上に集中力・認知能力の低下がもたらすデメリットが大きい。

以上のようなことを先人たちは既に発見していた。音楽とお酒は昔から今に至るまで、様々なシーンでとして共に供されている。このようなことが、音楽好きと酒好きがオーバーラップする要因になっていると考えられる。

蛇足|バー

バーは良い。様々なお酒が飲めるし、バーテンダーや周囲の方々との会話も楽しい。何より、お酒と真面目に向き合うことができる。

バーには色々な人が来る。経営者、営業マン、技術者、医者、画家、生臭坊主、リタイアした好々爺… アルコールで軽くなった口から玉石混交の情報が伝えられ、カウンターの上に蓄積されていく。ゲームとかでも初めて立ち寄った街の情報や、仲間を集めるためにバーやパブに行くだろう? 保険会社のロイズもカフェから始まったことを思い出して欲しい。人が行き交うところには情報が集まり、情報が集まる所には人が集まるのだ。人と情報が行き交う場所では、面白い事が起こるのだ。

だから僕は初めて訪問する街に行ったとき、可能ならバーに行くようにしている。オススメのレストランや観光地、地元のイベント情報など、より旅先で楽しむための色々なことを教えてもらえる。

また、よく行く街では拠点となる行きつけのバーを作る。「最近どうよ?」から始まり、街の変化や身の回りで起きたことを話す。顔馴染みになれば、こちらの好みも覚えていてくれるし、新しく入った面白いお酒を紹介してくれたりする。他にも色々お得なこともあるものだ。

「バーには行ってみたいけど、お酒のことは詳しくないし、普段は居酒屋でジントニックとかカルーアミルクとかしか飲まないし、バーテンダーとか常連さんとかに睨まれそう」という方々もご安心を。詳しくないと正直に言えば、喜んで好みに合う酒を提供してくれる。大抵の常連さんは新規のお客さんには優しいものだ。なんか雰囲気悪いな、自分には合わないな、と思ったら、一杯だけ飲んで店を出ればいい。正直なところ、入りにくいバーが多いのは確かだ。見つけにくく、中がどうなっているか分かりにくく、入るのを拒むような重いドアがあったりすることも多々ある。しかし、ちょっと勇気を出して入ってみればそこは良い憩いの場になるかもしれないのだ。どこか良さそうなバーを知ってそうな人に連れて行ってもらうのも良いだろう。

何故だか、凪いだ人生を所望しているにも関わらず、僕の人生は台風が来たときのように荒れている。荒れた海には休むための港が必要であり、バーはそういう場所の一つになりうるだろう。そういうわけで、バーは良いぞ。

最後に。言うまでもないが、お酒は二十歳になってから。また、飲み過ぎには気を付けましょう。そして、反吐を吐くところをわきまえましょう。家に帰るまでが遠足です。

【次回】冷えたビールと熱々のピザ

中野(Hr.・帰って来たヨッパライ)

参考文献等

バーテンダー、およびその道を志す方のテキストとして1987年に刊行した「バーテンダーズマニュアル」。1995年に全面改訂され「新版」となってから16年の歳月が流れ、更に新しくなったぞ。お酒周りのことを知るのには、一般書としてもこの上なくいい本だ。
最近、一番踊れた一曲。
キラキラしており、ビートが効いており、転調があり、ズバッと刺さる。たまんない。
めちゃめちゃ踊れるジャズバンド、TRI4THのニューアルバムが出たぞ!
詳細はこちらから。

余談1:文中の比較実験はクソ報告の例です。N=1だし。被験者が筆者本人だし。恣意性を持った、誘導するような本や記事には気をつけましょう。

余談2:諸般の理由よりアルコールを控えるようドクターに言われた。膝から崩れ落ちそうになったのは秘密だ。

余談3:先日のインプリラジオにおいて「本番で気をつけていることは?」という質問に「無であること」と回答したが、無であるためには練習が大事であると付け加えるのを忘れていた。マリアッチも「practice…everyday…」と言っている。練習しよう。


シェア: