【コラム】高速道路と日本語

人生ってね、高速道路を運転してるようなものなの… 高速車線を飛ばしたがる人もいるし追い越し車線から離れない人もいる… 低速車線で満足の人もいるわ…。

ルーシー・ヴァン・ペルト (漫画:Peanuts)

先日、弊団体の練習に参加するために名神高速道路を西へ走っていた。新名神・名神の集中工事に伴う車線規制でちょっとした渋滞がしばしば発生していたのには辟易したが、 天気は良く、サングラスを掛け、思い出したかのようにコーラを飲みながらおおむねご機嫌なドライブをしていた。ところが、草津JCT付近で大渋滞に巻き込まれる。名神と新名神、それから京滋バイパスが合流・分離する、BKCのあるあの辺りだ。何事かと思っていたら、反対車線で大事故が起きていた。なるほど、見事なまでの脇見渋滞である。この事故で亡くなられた女性の冥福を祈ると共に、怪我をされた方々の一日も早い回復を祈るばかりである。重体で意識不明になっていた女児の意識は先日回復したようだ。良かった。

しかし、疑問が残る。合流・分離があるから渋滞しやすいと言えど、事故も起きていない反対車線でこれほどの渋滞が発生してしまうのか?無い頭でいろいろ考えた結果出てきたのが「道路という繋がった混沌の中でバタフライエフェクトが発生しているのでは?」ということであり、さらにその原因を突き詰めてみると、「ドライバーが日本語を理解していないのではないか?」という滑稽な答えが導き出された。

安全に練習に参加すべく、高速道路の走行の十戒を紹介し、事故の憂いを晴らさねばならぬ。日々、自分の事を棚に上げ、問題を棚上げにし、ぼた餅を棚に上げている。しかし、気がつけば自分を見失い、さらにぼた餅は落ちてこず、降りかかるのは拡大再生産された問題ばかり。今日も今日とて、自分のことは棚に上げていく。

高速道路十戒

NExCO(Nakano: Express-way Careless Overtaker)からのお願いです。高速道路を運転するドライバーの皆様は、以下の注意をよく読み、用法・容量を守って正しく運転してください。また、必要に応じて日本語の再履修をお願いいたします。

1. 前を見ろ

自分を見失っている俺に対してこう言う人がいる。「前を向いて生きろ」、と。しかしそういう人に限って脇見をして意図せずスピードダウン、何とか歯を食いしばって前を向いて生きようとしている俺もブレーキを踏むハメになり、後ろの人がビビってブレーキ、渋滞が生まれ、事故が生まれ、やがて人は死ぬ… だから前を見ろ。道路脇にある看板にも『脇見注意』と書いてある。スマホとか運転中に触るな、危ないから。日本語を理解せよ。

2. 距離を保て

人との距離感、コミュニケーションを取っていく上で非常に重要な要素だ。「心の距離が遠すぎる」「距離の詰め方が急」「顔が近い」など、距離感に関するコンプレインを多く聞く。何故そこまで人との距離感を気にするのに車間は気にしないのか。大抵の人は車間を詰めすぎであり、怖い。そして前車のブレーキランプに反応してブレーキを踏み、 渋滞が生まれ、事故が生まれ、やがて人は死ぬ… だから安全な車間距離を保て。 公団はご丁寧に『車間確認』区間を設け、ご親切に距離まで表示してくれている。日本語を理解せよ。

3. 走行車線を走れ

言うまでもなく、大抵の高速道路は走行車線と追越車線に分かれている。クルマは走行するものであり、走行車線が基本的に走行するためのものであるというのは確定的に明らかである。時折、追越車線をいつまでも走り続けるクルマがある。そこへ相対的に速いクルマが追いつき、スピードを落とす。渋滞が生まれ、事故が生まれ、やがて人は死ぬ… だから普段は走行車線を走れ。日本語を理解せよ。

4. 追越車線で追い越せ

わざわざ追越車線と名前を付けるには理由がある。追越車線は追い越しをするための車線である、ということは自明である。追越車線が無ければ、相対的に遅い車を先頭に渋滞が生まれ、事故が生まれ、やがて人は死ぬ… だから、相対的に遅い車が走っていたら追越車線を使って追い越せ。抜いたら走行車線に戻れ。 あと走行車線で追い越しをかけるな、マジで危ないから。 日本語を理解せよ。

5. 加速車線で加速しろ

合流時には加速車線がある。大抵のクルマが加速車線で十分な加速をしていないように思う。後続車が来ていたらブレーキを踏むことになり、渋滞が生まれ、事故が生まれ、やがて人は死ぬ… だから、ちゃんと加速車線で十分加速しろ。『加速車線』は加速するための車線である。日本語を理解せよ。

6. 速度を回復しろ

もしかしたらご存知ないかもしれないが、地球には重力がある。故に下り坂では加速し、上り坂では減速する。下り坂の後の上り坂に転じる部分(サグ部という)では、物理法則に任せたままだと相対的に前車が遅くなる。また、渋滞が解消されるポイントで速度を回復しなければ、いつまでたっても後続車が続くことになる。結果、渋滞が生まれ(また解消せず)、事故が生まれ、やがて人は死ぬ… だから、減速しやすいところや渋滞解消時は速度を回復しろ。渋滞頻発ポイントでは『速度回復をお願いします』と書いてあったりする。お願いされているのだ。日本語を理解せよ。

7. トンネルでは点灯しろ

高速道路のトンネルは比較的明るい。だからか知らないが、昼間のトンネルでライトを付けないクルマをよく見かける。点灯を忘れているだけかもしれない。運転している本人はよく見えているかもしれないが、こちらからすればヘッドライトも見えなければテールライトも見えない。車幅灯でも不十分だ。距離やスピード感をうまく掴めず、 渋滞が生まれ、事故が生まれ、やがて人は死ぬ… だからトンネルでは点灯せよ。トンネル入口には『トンネル内点灯』と書いてある。日本語を理解せよ。

8. 常に周囲を把握しろ

走行車線・追越車線のところにも通じる話だが、どうにも周囲の状況把握と未来予想図IIを描くことが苦手な方が多いようだ。警官曰く、「3秒から5秒に一回はバックミラーかサイドミラーをチラ見しろ」。「速い車が来たら先を譲れ」「ピタッとついてくる乗員二人のセダンには気をつけろ」とも。 注意が疎かになると、そこから渋滞が生まれ、事故が生まれ、やがて人は死ぬ… だから、常に周囲の状況を把握しろ。教本にも『周囲の状況を常に把握しましょう』と書いてある。日本語を理解せよ。

9. スピードを出しすぎるな

とんでもないスピードでカッ飛んでいき煽り倒しているクルマを時折見かける。いわゆるドイツ御三家やミニバンに特に多い気がする。逆にGTカーやラリーカー、スーパーカーは割とおとなしく走っている印象だ。流れに身を任せて同化すると制限速度を若干オーバーしてしまうのは理解できるが、こちらは度がし難い。最高速チャレンジはサーキットかアウトバーンでやれ。 スピード出し過ぎの車が突っ込んでくると全体の流れが乱れ、渋滞が生まれ、事故が生まれ、やがて人は死ぬ… だからスピードは程々にしろ。『覆面パトカー取締中』『速度監視区間』とかご丁寧に表示してくれている。日本語を理解せよ。

10. 休憩しろ

最近のナビは賢い。連続して2時間くらい運転していると「そろそろ休憩しませんか?」と声をかけてくれる。「そんなことを言ってくれるのは君だけだよハニー」という気分になる。疲れは確実に集中力を削ぎ、乱れが生じ、 渋滞が生まれ、事故が生まれ、やがて人は死ぬ… だから(疲れを感じなくても)定期的に休憩しろ。PAやSAにも『こまめな休憩を!』と書いてある。日本語を理解せよ。

以上だ。胸に手を当ててみて心当たりがあった? 悔い改めよ、さすれば救い導かれん。

今日も安全運転で快適なドライブを!

【次回】壊れかけのRadio

中野(30代・男性・Hr.・棚上げ3級)

参考映画

バタフライ・エフェクト。
日記を見るとその日に戻れる力に目覚めた青年が、周囲の人々を幸せにするために何度も過去に戻っては悪戦苦闘する。
すごい映画ですよこれは。
MAD MAX 怒りのデス・ロード。
V8を讃えよ!

余談1:このあいだ走行車線を走っていたら30kmで合流してきたクルマがあった。殺す気か。横も後ろも詰まってて死ぬかと思った。

余談2:都市高速でしばしばある右側からの合流、めっちゃムズいと思うんだけど。

余談3:ETCカードを持っている人に限るが、NEXCO東日本西日本中日本がそれぞれやっているドライブプランがスゴいお得。遠方にクルマで出かける時は一度覗いてみると良いと思う。


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