眉唾で世界が変わる

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本コラムは個人の見解であり、所属するいかなる組織の公式見解ではありません。
吹奏楽団のブログですが、吹奏楽の話はたいてい無いです。


新着情報

新型コロナウイルス感染拡大防止に寄与すべく、インプリメーレの活動は現在休止中です。一都三県に緊急事態宣言も出ていますしね。

こうして、ブログを書いているのが、新着情報といえば新着情報です。引きこもりがちにならざるを得ないGW、春の野に吹く暖かく湿った風のような駄文をお届けできれば幸いです。


コラムのコーナー

1. 高名だが年配の科学者が可能であると言った場合、その主張はほぼ間違いない。また不可能であると言った場合には、その主張はまず間違っている。

2. 可能性の限界を測る唯一の方法は、不可能であるとされることまでやってみることである。

3. 充分に発達した科学技術は、魔法と見分けが付かない。

アーサー・C・クラーク

先日、俺がいつもどのようなことをしているのか、ニューカマーに説明する機会があった。詳細は伏せる(伏せなければならないのだ、察せ)が、画像とディープラーニングで云々、と、まぁ界隈ではよくある話だ。どうやら世間様はDXやAIにお熱で、完全に便乗しているような形になってしまっている… が、以前からそんな感じのことをずっとやってきていた。世間が扱いの難しさに気づき始め、サッと熱が引いていくさまはこれまでも様々な業界で目にしてきたので、おそらくここもじき腐海に沈む。第三次人工知能“ブーム”とかって言われるくらいだしね。

それはさておき、ディープラーニングとか人工知能とかである。10年ほど前にはコンピュータビジョン界隈で機械学習などを使って画像分類や物体認識を… というと「ホンマでっか」「使い物になるんかいな」みたいなノリで扱われていた。かくいう俺もそんな認識だった。だが、2012年にトントロ大学のチームがそういう大会でディープラーニングを使って圧勝してからというもの潮流が変わり、もうはや10年、今では右を見ても左を見ても深層学習、AI、ビッグデータ… そんな感じだ。

日本人の福島邦彦さんが1979年に発表した『ネオコグニトロン』という神経回路モデルが、今の画像認識ブームを牽引しているCNN(Convolutional Neural Network)そのものです。

画像認識とは|歴史・仕組み・最新事例まで徹底解説 | Ledge.ai

とあるように、理論はずいぶん昔からあったようだ。というか、理論はいたってシンプル、分かりやすいのだが、「そんだけの情報量どうやって処理すんのさ…」という問題にぶち当たる。時代は流れ、今をときめくNVIDIAのGPUに積まれた大量のコア(と使い勝手の良いプラットフォーム)によって処理が高速化され、ようやく使い物になるようになったのが割と最近というわけだ。

技術の進歩は早く、時代の流れはどんどん加速している。身の回りのあれやこれやも、ちょっと考えてみれば昔から(どういうタイムスパンで考えるかにもよるが)、随分進歩している。

  • 「鉄に電線巻いて電気流したら、磁石になるで!」←わかる(わからない、磁力とは… スピンとは… いったい…)
  • 「せや、うまい事交互に電気の流れる方向変えたったらクルクル回るもん作れるんちゃうか⁉」⇒モーター ←わかる
  • 「あかん… 地に足付けてたらうるさいし、スピードにも限界がある… せや、モーターを一直線にしてやれば、ものが勝手に浮いてスーッと動いていくんちゃうか⁉」⇒リニアモーター ←わかる
  • 「あかん… めちゃくちゃ電気食うし発熱ヤバいわ…」 ←すげーわかる
  • 「金属冷やしたら抵抗値下がるし、冷やしまくったったらええんちゃうか?」 ←わかる
  • 「金属をめちゃめちゃ冷やしたら抵抗無くなったわ!」 ⇒ 超伝導 ←わかる(わからない)
  • 「あかん… 冷媒が足りない… ゼニがかかり過ぎる…」 ←すげーわかる
  • 「この物質やったら液体窒素でも超伝導なるで!」←わかる(わからない)
  • 「これやったらいけるな、新幹線の代わりに敷いたろ!」← イマココ
  • 「CH8S に圧力かけまくったら(267GPa) 、287.7K(15℃)で超伝導なるで!」← マジ?*

というのが、主だった昨今の中央リニアや超伝導界隈のお話である。中央リニアにしても、そんなに冷却機構いっぱい作るの大変じゃねぇのかなぁ、と思うけど、気付けばそのうち完成しそうだしビビる。

*調べたら、マリアナ海溝の底の水圧が100MPa, カーボンナノチューブの理論上の引っ張り強さが100GPa, 地球中心の推定圧力が360GPaでした(Wikipedia”圧力の比較”より)。267GPaってお前…

もっと身近な例で言うと、 ちょっと前ですら、でっかいブラウン管(液晶ではない。これも進歩だ)モニタから電話回線にピーガーゴロゴロと音を流してネットワークにつないだり、パカパカするケータイでテキストベースのクッソ読み込みの遅いサイトを見ていたはずなのに、今ではタッチパネルメインの手のひらサイズの板で3DゲームしたりYouTubeを見たりしている。ビビる。

数年前、カナダの企業かどこかが量子コンピュータを開発した、というニュースがあったときには、界隈でも「嘘でゎ?」となっていたのに。気付けば色んな研究機関が量子コンピュータの実用化に向けてあれこれやっている。俺の家にもそのうち量子コンピュータがやってくるかもな。

どいつもこいつも、少し前までは眉唾ものの技術だったはずだ。でも、そいつらが世界を変えてきたし、変えていく。人は云千年前からちっとも変わらぬが、技術はそうではない。その技術を発明するのも、それらを使って製品やサービスを生み出すのも、そしてそれらを使うのも、つまるところ、人だ。ひょっとしたら、それはあなたかもしれない。

『その時代では実現不可能な出来事を可能にするもの』、というのは型月の魔法の定義だったか。別にクラーク大先生に喧嘩を売るつもりはないが、高度に発達せずとも、次世代の技術の段階で、俺には魔法と見分けがつかない。そのうちどこでもドアとかタケコプターとかもできるんじゃねぇかなぁ。

俺はそんな技術、それから失敗の歴史を眺めるのが、本当に好きだ。Wikipediaの工学の失敗カテゴリとか失敗百選とか、超ためになるし面白いので、暇つぶしに読むといいよ。個人的には“ボストン糖蜜事件”の名前のインパクトが好き。どうせゴールデンウィークとはいえ、みんな引きこもりでコンテンツに飢えてるんだろう?

そんなことより、まさか本当にエヴァが完結するとか、まさか本当に月姫リメイクが出るとか、2021年はそういう意味でも魔法みたいな一年だな、と、そんなことを思う今日この頃です。

今週のリコメンド

Cicada

シケイダ(セミの意)。台湾の室内楽アンサンブル。現在はピアノ、ヴァイオリン、チェロ、アコースティック・ギターという4人編成。いわゆる“アンプラグド”なポストモダンクラシックバンド、ともいえる。ポストとモダンとクラシックが矛盾しているような気がするのは気にするな。

2009年秋、江致潔(Jesy Chiang)を中心に結成。日本にも何度か来日してツアーを行っている様子。

『人々が、セミを形ではなく音によってその存在を知ることから、 この名前が付けられた』とのこと。なんと言うか、日本や台湾を含むアジアの美しい風景を音楽にしたらこういうふうになるんじゃないのかなぁ、という、繊細で清らかな音楽が沁みるのでリコメンド。



余談1: ゴールデンウィーク、金の週。金と言えば金曜日。金曜日と言えば投稿日。「ゴールデンウィーク中は毎日投稿したら、ひょっとしてクールでは?」と思ったが、正直、結構しんどそうなのでやめにしました。やめです、やめやめ。先週とか色々やってたら、すっぽかしてしまったしね。

余談2: というか、今年はゴールデンウィークの存在を極力抹消した。以前にも書いたが、大事なのは淡々と続く灰色の日々であり、そこに輝かしい休日は不要なのだ。急にガッツリ休んだりしたらテンポが大きく乱れるであろうし、これまでも、それが一因で失速し、暗く冷たい泥沼に足を取られてきた。さすがに何回もやらかしたら俺も学習する。祝日などない。そういうわけで、守衛さんに怒られない日は普通に通学&出勤することにした。

余談3: 弊団随一のイケメン横笛担当が「富士山見たい」「キャンプしたい」と言うので、さっそくやってきた。キャンプ初心者、二人、マシュマロやソーセージを焼いたり、無駄話をして、楽しかったです。鳥のさえずりで午前5時頃に目が覚め、どうにも寝直すこともできなかったので、「やうやう白くなりゆく」富士山の山際を眺めていた。その景色がいとおかし。写真も撮ったので、みんな見て。夕方の写真も併せとくからさ。

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