穏やかな死

吹奏楽団インプリメーレでは団員を大募集中です。
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なお、個人の見解であり、所属するいかなる組織の公式見解ではありません。

ニュース

大事なおしらせ

以前より告知させていただいているとおり,2020年10月10日(土)に予定されていたThe Live 2020は延期となりました。詳細につきましては、下記の告知ページならびにYouTubeの動画をご覧ください。

http://www.imprimere.jp/news/586/

YouTube

指揮者迎氏主宰のプリラジ、スピンオフ回としてTeam do see “lazo”のヤッチさん・れなさんとの音楽談義が始まりました。

コラムのコーナー

「旅行かね…旅行は若いうちだな」
「じいさん、いくつだ?』
「俺か……九十六だ」
「じいさん、そんなに長い間生きてどうだった?」
「楽しかったよ」
「いくつの時が、一番楽しかった?」
「……今だな」
「退屈じゃなかったかい?」
「退屈?退屈してる暇なんぞあるかい。生まれてよかった、とても楽しい人生ってやつさ。これからもずっと、楽しいに違いない……」

マスターキートン『穏やかな死』(浦沢直樹)

今回はしんみりとした記事になる。警告はしたからな。

先日、祖母が息を引き取った。金曜日、帰りのバスの中で「今週末は特に予定もないしどうしようかなぁ…」とぼんやり考えていたところに、突如飛び込んだ訃報。一挙に週末の予定が埋まった瞬間である。翌朝、実家に帰った。まさか二週連続で帰省することになろうとは。

老いには勝てず、ここ数年は家族やヘルパーさんから介護されたりしながら自宅で余生を過ごしていた。爺さんには先立たれており、一人、リビングでテレビを見ながら美味そうにメシを食っていたのを覚えている。

享年92歳。聞いたところによれば、夕食の最中にフッと意識を失い、そのまま亡くなったらしい。 まさに天寿を全うした、と言っていいだろう。らしい死に方だ、と思った。葬儀場に運ばれる前に顔を見に行ったが、その死に顔はほほえみを湛えた、まことに穏やかなそれで、まるで昼寝をしているかのようだった。今にも起きてきて、「よく帰ってきたね」と言ってくれそうな。

しかしながら、もう二度と目を覚ますことはない。死とはそういうものだ。極めて洗練されたシステムの終了、そういうものだと頭では理解はしているけれど、やはり告別式ではただただ、静かに涙を流すこととなった。

祖母を知る誰もが、「大往生だ」「まさにあの人らしい穏やかな顔だ」「ありがとう」と言っており、そしてその誰もが、良かったという思いと寂しい気持ちがないまぜになった顔をしていた。

おれが唯一悔やむことは、その前の週にも帰っていたにもかかわらず顔を見せることができなかったことだ。結局、最後に話したのは正月だったか。「体には気を付けや」「ばあさんもな」と、いつも通りの別れの挨拶をしたような覚えがある。

人間、誰しも死ぬことからは避けられないのに、割と意識から抜け落ちがちである。おれは実家から離れているが故、親兄弟ですら、あと数回しか会えないかもしれない。友人もそうだ。そして、故人が彼岸に行ってから、もっと会って話をしておけばよかった、と常々後悔するものである。

家族や友人、周囲の人々(バンドメンバー含む)、もっと大切にして、できうる限り後悔が少なくなるような生き方をしたい。もし欲を言う余裕があるのなら、あのような穏やかな死を迎えたい、そう思う今日この頃です。

安らかにあれ。

今週のリコメンド

Keith Jarrett: Death And The Flower

MASTER KEATON:穏やかな死(完全版3巻収録)


余談1: 葬儀の諸々が終わり実家から自宅に帰る新幹線の車内、友人から「妻が妊娠しました。出産予定日は4月です」と連絡が来た。去る者もあれば、来る者もあり、である。

余談2: また別の日には、また別の友人が今週末に家族の仕事の都合で遠くへ引っ越すと知らせてきた。早速、その日の晩に会った。散々話をしたが、それでも話は尽きない。やはり、持つべきものは友だ。

余談3: 良い感じのフルーツパーラーでかなり良いお値段のイチゴパフェを食べた。めちゃくちゃ美味かった。素晴らしいスイーツは人生を豊かにしてくれる。


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