【コラム】ゴローとシャーリー

ミームという言葉はよいミームだった

リチャード・ドーキンス
(英、進化生物学者・動物行動学者)

先日、テレ東のドラマ、『孤独のグルメ』の第8シーズンの放送が発表された。 孤独のグルメは主人公である井之頭五郎が一人でメシを食べる、ただそれだけと言ってしまえばそれまでの漫画を原作としたドラマである。主演の松重さん曰く「一昨日、仕事から帰ったら、ネットニュースを見た妻に10月からやるんだねと言われました。再放送中にテロップが流れたとの事。さすがテレ東、出演者もビックリの粋なサプライズをするなあと思いました。心の準備は出来ていましたが、なにせ一昨日妻から知らされたばかりで、内臓の準備が整っていません。シーズン8の放送中も、私の不祥事による降板など、予断を許さない状況です。ネットニュースよりも放送終了後のフライングテロップに御注目ください。」とのこと。新シーズンが楽しみだ。

孤独のグルメに限らず、テレ東はいい番組を作る。鉄板の『空から日本を見てみよう』。『俺のダンディズム』はオーセンティックな色々なアイテムを知ることができて良い。最近、NETFLIXで『(ウルトラ)ハードボイルドグルメレポート』の全世界配信が始まった。放送中のドラマだと『サ道』が良い。OPがCorneliusでビックリだぜ。

『鬱ごはん』と共に、孤独のグルメは最高のグルメ漫画の双璧をなしている。いつだって一人でフラフラしているが故に、一人で食事する機会が増え、いつしか一人メシを愛してしまったのだろう。愛とは罪深いものよ。前回の練習の休憩中に一人でメシを食べている様子が目撃されている。

そんなことはさておき、『孤独のグルメ』といえば二言目に来るのは『シャーリー』である。一人でメシを食う漫画と、愛らしい少女がメイド生活を送る漫画がどう関係するのか? 原因はふたばチャンネルのとしあきたちによるネタ画像連作、『ゴローとシャーリー』である。これがインターネットの片隅で流行り、私はすっかり毒されてしまった次第である。Amazonでも過去、相互に関連商品として挙げられていたり、森薫(シャーリーの作者だ)の名前を見ただけで孤独のグルメを読みたくなるのだから、ミームというのは恐ろしい。

随分と前置きが長くなってしまった。今回は、ミームについて書こうと思う。

ミームとは何ぞや?

ミーム。耳慣れない方もおられるかもしれない。かのドーキンスさんが『利己的な遺伝子』を説明するために言い出したオマケ的概念である。wikipediaによればミーム(meme)とは、脳内に保存され、他の脳へ複製可能な情報である。日本語で模倣子、模伝子、意伝子と呼ばれることもある。ミームの例としては、習慣や技能、物語といった社会的、文化的な情報が挙げられる。文化的な情報は会話、人々の振る舞い、本、儀式、教育、マスメディア等によって脳から脳へとコピーされていくが、そのプロセスを進化のアルゴリズムという観点で分析するための概念である。

ミームは遺伝子(gene)との類推から生まれた概念である。それはミームが「進化」する仕組みを、遺伝子が進化する仕組みとの類推で考察できるということである。つまり遺伝子が生物を形成する情報であるように、ミームは文化を形成する情報であり、進化する。

詳しいことは参考文献の『利己的な遺伝子』を読んでほしい。決して説明が面倒くさいとかそういうわけではない。ホントホント。

テクノロジーの発展により、インターネットが発明され、ミームの伝播と進化は爆発的に加速した。インターネットミームの面白いところは、その加速度と保存性にある。先に挙げた、『ゴローとシャーリー』は異様な進化の一つであるとも考えられよう。様々な人々の交流の中で、異形が生まれては滅び、極稀に生き残っていたりするから面白い。

笑いに歴史あり

より合理的なものが生き残るという点においては、ミームもジーンも同様である。インターネットミームを考える上で面白い題材が、笑いの表現である。

先カンブリア時代のネットの大海において、笑いの表現として『(笑)』というものが生まれた。時代を経て、古生代において、文末の『(笑)』から『(笑』『笑)』『笑』といった亜種が生まれる。さながらカンブリア大爆発である。

中生代においては『ワラ』『藁』が生まれ、『(爆)』やその亜種の『木亥 火暴』、『死』やその亜種『タヒね』などと、地上の覇権を争っていた。しかし、彼らの突然の終焉を迎える。小惑星『シヴァ』の衝突である。この衝突により想像を絶する高さの津波が発生、生き残ったものたちも舞い上がった塵により太陽光が遮られたため下がった気温の影響でその数を大きく減らした。今もメキシコにそのクレーターが残っている。

その後の新生代において、『wwwww』が登場する。ここから更に合理性を追求していった結果が『w』であり、また異音同義語としてウケを狙いに行った結果が『草』である。これが笑いの表現の現在である。

笑いの表現一つとって見ても、そのミームに歴史があり、これを紐解いていくのは面白い。インターネットミームの観察方法として、霞網を林に張って捕獲する方法と、昔のアーカイブを眺める方法、というのが一般的だ。

ただ、絶滅に瀕しているミームもある。ジオシティーズというサービスには、個人サイトが多くあり、有象無象のミームが太古の姿を保ったまま渦巻いていた。キリ番、相互リンク、直リン禁止、バナー交換などである。先日、とうとう時代の波に飲み込まれ、ジオシティーズが終焉を迎えたことにより、ここを住処にしていたミームたちもすっかり見なくなった。さながら小笠原諸島で独自進化した生物系が島ごと沈没したようである。インターネット老人会の会員としては、この教訓を胸に、環境の保護を訴える次第である。

ミームから音楽を捉える

とまぁ、くだらないことを延々と書いてきたが、少しは真面目な話をしよう。音楽の話だ。

正真正銘、太古の昔より人は楽器を作り、音を奏でてきた。楽器の作り方という『情報』、フレーズという『情報』、音階という『情報』、リズムという『情報』、奏法という『情報』、音楽をどの断面で切ってもミームが表れる。

クラシックの話をしよう。バロック時代、キリスト教の為に、バッハが『主よ、人の望みの喜びよ』を書き、ヘンデルは『メサイア』を書いた。彼らの音楽に影響を受けつつも理性的な音楽を作った名手として、モーツァルトやハイドン、ベートーヴェンらが登場し、古典派が形成される。そして時代はロマン派、国民楽派と流れ、現代音楽へと続く。

一方で、世界各地の文化ごとに、それぞれの特徴を持った音楽がある。やがて時代とともに人々の交流が増え、互いに影響を及ぼし合いながらそれぞれの音楽を作り上げてきた。そして、米国においてアフリカの文化とヨーロッパの文化が組み合わさってブルースやゴスペル、ジャズといった黒人音楽が形成されてからこの方、音楽のtrunkはアメリカにあったりする。branchだったビートルズが世界的に大ヒット、mergeしている。そんなこんなでクラフトワークがピコピコやったり、マイケル・ジャクソンがアフリカを救おうとしたり、MCハマーがガニ股で踊ったり、ロボット頭の二人組が出てきたり、エンヤが流行ったり、EDMが流行ったり、潮流を行き来しながら今のポピュラー音楽がある。

そして、クラシック音楽も、民族音楽も、ポピュラー音楽も、相互に影響を与えつつ、それぞれの道を行っている。弊バンドが演奏しているのは、この大きな流れのひとつの傍流でしか無いが、それでも、大きな流れの一つを構成していると思えば、不思議なものだなぁ、と思う次第である。まるで生物多様性の話を聞いているかのようだと思いませんか皆さん。

弊バンドに限らず音楽を演奏する人は多いが、その演奏する音楽のルーツを辿り、ミーム的に考えている人は案外少ない。本当に、今の音楽は音楽だけに限らず、文化・宗教・習慣など、様々なところから影響を受けている。色々な音楽を聴き、様々な文化を知り、歴史を知る、ということは決して無駄にならないと思うのだが、どうだろうか。

【蛇足】ところでモテない

ところで、私は生真面目で人畜無害かつ聖人君子、頭脳明晰にして博覧強記であると自負している。こうなってくると「素敵!抱いて!」となりそうなものであるが、美女がどんどん押し寄せてきて困っちゃうという経験はいまだかつてない。唯一、蚊にだけはモテる。メスはメスでもホモ・サピエンスがいい。福山雅治も「抱かれたい男No.1になったからといって街で『抱いて!』とは言われないので、意味ねぇよあのアンケート」と言っていたらしいので、やはりそういうものなのかもしれない。結局、女子たちの貞操観念ががっちりマンデーしているか、私の前世がゴミムシダマシか何かだったのだろうと思われる。

生物の目的は子孫を増やす事であり、ミミズだって、オケラだって、アメンボだって、みんなみんなそれに向けて全力で生きている。にもかかわらず、子孫を増やせそうな目処は今のところ立っていない。やべぇ。両親のみならず生きとし生けるもの全てに顔向けできない。

「結婚しなくたって、楽しいことはたくさんあるよ」という友人、「私、独身だったとしてもアンタみたいな人と結婚したくないわ」という母、「俺が女だったって、俺と結婚するのはイヤだよ」という私、皆様の声に支えられてなんとか生きています。

弊バンドの知名度向上、集客増加、ゆくゆくはメジャーデビュー、そしてグラミーという夢を見ながら、毎週このようにしてブログを書いている。だが、その裏にはジーンを残すことに見切りをつけ、ミームを拡散してどうにかして人類史に痕跡を残してやろうという魂胆があることは誰も知らない。

【次回】 生命、宇宙、その他もろもろの答え

中野(Hr. / 結婚できない男)

参考文献

利己的な遺伝子(リチャード・ドーキンス著)
ミームの概念の言い出しっぺ。
単純に読み物として面白いので是非。
孤独のグルメ(久住昌之 原作・谷口ジロー 作画)
「モノを食べる時はね、誰にも邪魔されず
自由でなんというか救われてなきゃあダメなんだ
独りで静かで豊かで…」
アームロックが出てくる。煮込み雑炊は出てこない。
シャーリー(森薫 著)
シャーリー、めっちゃかわいい。
煮込み雑炊もアームロックも出てきません。

今週のリコメンド:KIRINJI

君はキリンジを知っているか。過去、堀込兄弟が結成していたバンドだ。今は弟が抜けて、兄がバンドメンバーを集めてやっている。最近では色んなアーティストとコラボしており面白い。少し前、”のん”さんがアカペラで歌っていたLINEのCMを覚えているだろうか? あの歌『エイリアンズ』のオリジナルを歌っているのがキリンジだ。

キリンジは、歌詞が良い、メロディラインが良い、コード進行が良い。J-POPの良心であり、日本のシティポップの旗手である。いぶし銀のような歌がいっぱいあるので、是非聴いてみてほしい。おすすめの曲を紹介しようとしたが、一杯ありすぎて無理だった。鉄板どころでは『エイリアンズ』、『スウィートソウル』、『Drifter』あたりか。『千年紀末に降る雪は』『悪玉』あたりも良い。

3
どれか1枚だけ、と言われれば間違いなくコレ。
愛をあるだけ、すべて
今日現在の、最新アルバム。
色々な試みもされていて面白い。

余談1:なんにもやる気しねぇ、今週はブログの更新を休みにしようかと思ったけどなんとか書いた。偉い。継続は力なり、だ。

余談2:元気が出ないので、CoCo壱番屋でチキン煮込みほうれん草トッピングを食べて、スタバでダークモカチップフラペチーノを飲んだら、ちょっと元気出た。

余談3:盆休み 桃色動画と パケ死かな


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