香りを聞く、音楽を味わう。

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本コラムは団員の中野がきまぐれに金曜日にお送りするコラムです。
内容はすべて個人の見解であり、著者が所属するいかなる組織の公式見解ではありません。
なお、吹奏楽団のブログではありますが、話題がノンジャンルである点についてはご容赦ください。


THE LIVE 2022「うまいもん市」


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技術班大西による、Live配信舞台裏あれこれ。
忘れ物担当井筒による、パーカッションあれこれ。

コラムのコーナー

自らの五感を信じることのできぬ人間は、五感以外の何物も信じることのできぬ人間同様狂人である。

ギルバート・ケイス・チェスタートン(英・作家)

先日、The Live 2021が終わり、実家でリモートワークをしていたわけだが、どうにも実家というのは集中できない。いつもの環境と違うというのが大きい。どうにも集中できないので、休憩がてら散歩をしつつ、街へ出てやっつけることにした。

人によって集中できる環境というのはまちまちである。俺の場合はあまり人のいないところで、ゆったりとやっているうちにのめり込む、というのが結構捗る。図書館で勉強をする人も世の中には多いが、俺は勉強そっちのけで小説を一本読み終わってしまい、「一体俺は何を……」となってしまうのでダメだ。そういうわけで、街へ出てシーシャをポコポコと吸いながらぼんやりとやっていたのだが、これがまぁ、捗るわけですな。紅茶を飲み、煙を味わい、香りを楽しむ。真にリラックスした状態からのアウトプットが悪いわけがない。

とはいえ、シーシャも無限に吸えるわけではない(吸えるが)。お店を出て、さて次はどこへ行こうか、となったとき、京都に良いお香屋さんあるという話を思い出した。聞くところによると、四条烏丸にあるすごいきれいなビルの中にあるリスン京都という店らしい。

四条烏丸にめちゃくちゃ詳しいわけではないが、そんな店あったかね……?と調べてみたら、COCON烏丸に入っていた。COCON烏丸と言えば、京都の皆様の愛するFMラジオ局であるところのαステーションをはじめ、ミニシアター系のわりにスクリーンが3つもある京都シネマ、そして一杯ひっかけるには最高のHUBがある。立地も良い。そういうわけでしばしばCOCON烏丸にはお世話になっていたが、お香屋などかつての俺の眼中にはなく、その存在を知らなかった。人は、見たいものだけを見て、聞きたいものを聞く。愚かな生き物であるので、特に意識にないものを知らぬでも仕方のないことであるなぁ。そういうわけで、ハッピーアワーのHUBでシュートを決められる京都サンガの試合を横目で見つつハブエールひっかけてから、お店に向かったわけだ。

面白かったのが、あたかもデパートの化粧品コーナーのようなカウンターに通されて、色々なお香を焚いてもらいながら、気に入ったお香を買い求めるというそれ。デパートの化粧品コーナーについては詳しくないけど、相談しながら欲しいものを買う、というルーチンはそんなに変わらんだろう。万物は相似である。

かつて、20代前半特有の「部屋をおしゃれにしてモテモテに!」みたいな意識から、リキュール類を集めてみたり、変わった香辛料を集めてみたり、部屋でお香(ヴィレヴァンで売ってるやつだ)を焚く、といった極めてインスタントかつ分かりやすい生活をしていた時代もあった。すっかり家で酒を飲むことが減り、当時より自炊にかけられる時間も減った。部屋がオシャレだからモテるわけではく、オシャレな人がモテやすく、また部屋もオシャレである可能性が高いだけの事である、ということも。だが、たまにお香を焚く、というのは未だにやっている。

香り・匂いは、大事だ。人は嗅覚による影響をかなり受ける。爽やかな香りがあれば気分がシャキッとするし、穏やかな甘い香りがしていれば落ち着いた気分になれる。夕方、どこかから漂ってくるカレーや焼き魚の匂いに、かつて在りし日を思い出し、涙することも、あるいはあるかもしれない。そして、いつまで経っても新宿の饐えた匂いには慣れない。

最近、香りを大切にしよう、という機運が個人的に高まっている。いつまで経っても仕事は捗らず、論文も書けないので、デスクにローズマリーの鉢植えを置いたら、フレッシュな香りにシャキッとした気分でPCに向かうことができることに気が付いた。おかげで、勝ちまくり、モテまくりの日々である。ただし、筆は進まない。

そんなことはさておき、お香の話である。「なんか?秋っぽくて?寝る前に焚いて落ち着けるような?」というふわっとしたオーダーをして、色々と出してもらったのだけれど、集中して香りを味わうのが、まぁ楽しいのなんの。一つ一つのお香で、受ける印象がまるで違う。概念的なたとえで申し訳ないが、形や色が違う。まるで、楽器の音色やちょっとした音楽を聴いているような感覚になる。

お香の楽しみ方の一つに、聞香、というものがあるそうな。香りを聞く。ただ単に嗅ぐのではなく、心を傾けて香りを聞く、心の中でその香りをゆっくり味わうそうだ。きちんとしたお作法などがあるそうだが、色々出してもらって集中して香りを試していたのは、 聞香に近いそれだったのかもしれない。そうすると、店名のリスンという名前にも合点がいく。

五感の一つに集中して何かを楽しむ、というのは、膨大な情報量やToDoに囲まれた現代において、非常に贅沢な時間であることだなぁ、と思う。しかしながら、感覚こそが生命の本質みたいな部分もあり、些事に振り回される現代人は感覚が鈍りがちでもある。BGMにしろ、ファストフードにしろ、色々な感覚がインスタントに消耗されているのでは?たまには、香り、あるいは音、味、触り心地、風景や絵画、といったものに正面から向き合ってリフレッシュする必要があるのでは?そういう意味では、ちゃんと音楽やってるってのは、意外と滋養強壮に効いてんじゃないのかなぁ、と思う今日この頃である。


今週のリコメンド

JiLL-Decoy association

毎週火曜日の午前はいつもの拠点から谷を隔てた離れた場所で実験のお手伝いなどをしている。実験の後始末などをするといつも14時くらいになっているが、ここからお気に入りのカフェバー(喫煙可)で昼飯を食べながらのんびりするのが火曜日のささやかな楽しみとなっている。この時間帯、このお店ではSpace Shower TVのカラオケランキングがいつも流れている。だいたい90位前後だ。レミオロメンの粉雪、ポルノグラフィティのメリッサなどに混じって、yamaの『春を告げる』ってのもあった。yama……? 知らない子ですね…..。最近はyoutubeとかinstagramとかtwitterとかニコニコ動画とかで火が付く新進気鋭のアーティストが多すぎて俺にはついていけぬ。前回のThe RECでもYOASOBIって誰?とか言ってた覚えがある。最近の流行りはトンと分からん。

デスクに戻ってspotifyでNew Releaseのプレイリストを聴いていたら、敬愛するJiLL-Decoy association(以下ジルデコ)の新曲が流れてきた。ん……?なんかいつものジルデコより相当アガる気がするが、けっこう良いな……?というか、この歌詞、なんか聞き覚えがあるな……?というわけで調べてみたら、件のyamaさんのカバーだった。

ジルデコは日本のジャズ・ポップ・ロックのクロスオーバーバンドだ。かつてはスリーピース、今はchihiRo (vocal)、towada (drums)のデュオ。海岸線をドライブしながら流すのにピッタリな音楽がたくさん。あるいはオシャレ感のあるインディペンデント系カフェとかで流れてそう。超良い。こういうのでいいんだよ、こういうので、を地で行くバンドである。

ジルデコによるカバー版『春を告げる』
春を告げる、オリジナル版。


余談1: とはいうものの、俺は俺の五感を信用することができない。俺の見ている青色が、あなたの見ている青色と同じだと、どうして言えるのだろう?はたまた、俺が水槽に浮いた脳ではないと、どうして断言できるのだろう? 疑心暗鬼に囚われ、だからと言って今ある現実から目を逸らすわけにもいかず、消耗し続ける毎日である。

余談2: ダイエット進捗。先週は土曜日にしこたまビールを飲みハイカロリーなおつまみをたくさん食べた(そのあとオーディオコメンタリー収録に臨んだ)。プランクを一日だけやった。65.4kg(±0.0kg)。

余談3: 紫煙のお時間。今日はシーシャ。Social Smoke(US)のレモンパイだ。レモンパイというお菓子は人類が生み出した最高のもののひとつであり、それを模したフレーバーが不味いわけがない。以前から吸ってみたいと思ってはいたのだが、超品薄(ディスコンという噂だ)でお店に行っても吸えない状況が続いていた。しかし最近どうやら海外市場専用品として復活したらしく、晴れてお家で吸うことができたわけだ。レモンの爽やかな酸味と香り、それでいてバターやメレンゲの甘さも隠れている。最高。プロ曰く、ミックスせずにそのままでどうぞ、という理由が分かる。これでいい。

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