カレーと音楽

冷めないうちに食べな!

カレーパンマン(アンパンマンより)

先日、一人、ランチを求めて街中をフラフラしていた。路上で揺らぐ陽炎。リーマンだらけの雑踏。空腹なだめる葛藤。「腹が… 減った… これは早くどこかに入ってなにか食べないとマズいな… だが俺は今、何が食べたいんだ?」と俺の中の井之頭五郎が語る。目に付いたスープカレーの看板。「スープカレーか… それもありだな… 時間もあんまり無い。よし、ここだ。」とお店へ飛び込んだ。

おしゃれな店内。女性客ばかり。オッサンがいそうな様子は皆無。多少の場違いさも感じたが、とりあえずフィッシュフライと野菜のカレーを注文する。美味い。辛さの中に甘みと旨味が隠れているカレースープ。ライスに絞ったレモンの爽やかさが食欲をかきたてる。汗が滝のように吹き出る。「そう言えば俺、辛いもの苦手だったな…」と気付いた頃には時すでにお寿司。早々に完食。バシッと会計。店を出ても太陽は変わらず天頂にあり、その日差しは相変わらず強烈だったが、なんだか晴れやかで爽やかな気分でオフィスへ戻ったのだった。

カレーは美味い。多種多様なカレーがあり、家でも街でも食べられる。日本でカレーが嫌いという人を見かけることは少なく、もはや国民食である。日本印度化計画は着々と進んでいるのだ。毎週金曜日投稿なのに今までカレーの話が無かったことのほうが不思議なくらいだ。カレーの話をしよう。

カレーと音楽

家で作って食べる家カレー、というものがある。各家庭で(さほど大差は無いにせよ)それぞれの味があり、ホッとする家庭の味ランキングではおまえがナンバーワンだ。お袋の味は肉じゃがではなくカレー、という人も多いのではないだろうか。一方で、カレー屋へ行って食べるPROのカレー、というのもある。こちらは様々なスタイルがある。詳しくは後ほど述べるが、様々なスタイルがある。家庭ではなかなか味わえないクオリティのカレーを食べに行くことが多かろう。カレーという大きな括りで見れば家でも食べられるにも関わらず、である。そこにはプロフェッショナルの仕事の流儀があるのだ…

一人で食べるカレー、皆で食べるカレー。というのもある。一人暮らしの自炊の結果、ひとり慎ましく食すことも、外に出かけた時に孤独のグルメをすることもあるだろう。また、家族で集まって食卓を囲み、ワイワイ話をしながら食すこともあるだろう(カレーの原初体験である)。また、友人と「あそこのカレー屋美味いらしいから行ってみようぜ!」とお出かけすることもあるだろう。

どこで食べるのか、という要素もある。多くのカレーは屋内で食べられるが、カレーと言えばキャンプや林間学校などの食事の代名詞でもある。同級生たちとワーワー言いながら飯盒炊爨し、トンビに肉を取られるクラスメイトを笑いながらカレーを作る。みんなで作ったカレーをみんなで食べる。そういう経験を皆さんもしたことがあるのではないだろうか?外で食べるカレーの開放感も格別である。

そしてカレーにはスタイルがある。日本のカレー、インドカレー、カシミールカレー、タイカレー、欧風カレー。いわゆる日本のカレーにしても、具材に何を使うのかという点において無数のアレンジがある。牛肉?豚肉?鶏肉?マトン?シーフード?野菜のみ?トッピングは何にする? また、簡単さを追求したレトルトカレーという存在もあることを忘れてはいけない。

カレーは身体にも良い。様々な具材が入ることで様々な栄養素が含まれている。スパイシーで、代謝も促してくれる。往々にしてハイカロリーだ。そして何より美味しいものというのは精神にも効く。

カレーはもはや音楽である。一人で音楽を聴いて浸る人もいるだろう。家でただ演奏を楽しむためだけに一人ギターをかき鳴らす人もいるだろう。友達同士でコンサートに行って楽しみを共有する人もいるだろう。複数人でセッションし、一つの曲を奏でる歓びを感じる人もいるだろう。室内で聴く・演奏するのもいいし、野外で聴いたり、演奏する開放感もある。そして音楽には多種多様な地域性、楽器、そしてジャンルがある。ポップスに始まり、壮大なクラシック、アドリブを楽しむジャズ、レゲエ、ヒップホップ、エレクトロニカ、現代音楽等。挙げ始めたらきりが無い。家で簡単にCDやネットでプロの演奏を聴くこともできる。そして、音楽は精神にも肉体にも良い効果がある。

これだけ共通点があれば、もはやカレーと音楽の間にあるのは味覚・嗅覚と聴覚という感覚の違いだけである。故に、カレーは音楽だし、音楽はカレーだ。

カレー、その郷愁

カレーは強烈だ。その香り、味。どれだけ遠く離れようと、時間が経ようと、エピソードやシーンとともに、頭に染み付いているものである。

クタクタに疲れた仕事帰り、近所のご家庭から流れてくるカレーの香りに、小さい頃を思い出させられ、人によっては涙を流すかもしれない。

音楽も同様である。「この、いつか聴いたメロディ、これは誰と聴いたのか?ああ、当時付き合っていた子と聴いたんだ」「この歌、懐かしい。小学生の頃、よく聴いて歌ったなぁ」「何故この曲はこれほど胸に刺さるのか… そうか、今は亡き爺さんとよく行ったデパートの屋上の遊具のBGMだったな…」等、音楽と記憶は共にある。

あなたがこれまで辿ってきた道は、カレーと音楽と共にある。彼らの記憶があなたの後ろをサポートしてくれる。前を向いて生きていけみたいな無責任なことは言わない。だが、あなたの食べてきたカレー、聴いてきた音楽があなたを作っているということだけは言えると思う。

蛇足│このカレー屋が美味い!2019

ということで、今回もやっていきましょう、この〇〇がスゴい!2019。

関西編

アイリッシュカレー

大阪は中津、梅田から少し歩いたビジネス街の中にこの店はある。欧風カレーの店だ。じっくりコトコト、ギネスビールで煮込んだ大人の味。ポークカレーが最高に美味い。豚肉が口の中でほぐれて溶けていく感覚。そしてコク。カレーに超合う。平日はビジネスマンでいっぱいだが、休みの日ならば割と空いている印象がある。是非に。

かれー屋ひろし

京都は円町駅から歩いて10分、住宅街の中にあるスープカレーのお店だ。野菜の甘みを活かしたスープが、めちゃめちゃ美味い。おすすめのトッピングはお店のリコメンドでもある、ししゃもフライ。辛い物が苦手な俺でも大丈夫。金閣寺や龍安寺、北野天満宮なども比較的近いので、観光に来た時のランチにいかがだろうか。帰省した時にプラっと行くのだが、最近は行列ができたり店内がいっぱいだったりして大変だ。なんか、『せやねん』で取り上げられたらしいね。

関東編

札幌ドミニカ 銀座店

札幌なのかドミニカなのかはっきりしない店名だが、京橋と銀座の境目にある。スープカレーの名店だ。様々な種類のスープがあるが、どれも美味しい。個人的にはトマトがおすすめ。東京駅に行った時には高頻度で吸い寄せられてしまう。ザンギエフのパイルドライバーみたいなものだ。近所には食パンの名店、セントル ザ・ベーカリーがあり、いつ来ても行列がすごい。食パンを買うついでに訪れてみてはいかがだろうか。銀ブラもできるぞ。

ライオンシェア

かつて、長野県は松本市に『シュプラ』というカレーの名店があった。その味を引き継いだのが代々木にあるライオンシェアだ。チキンベース、スパイスベースのスープ状のカレーの他、この店の名物のパラパラのドライキーマカレーがある。美味い。そして、カレーのスープを一口。美味い。スープをおもむろにキーマカレーにかけて食べる。風が語りかけます。美味い。美味すぎる。

【次回】問題解決手法や古典制御を音楽へ持ち込む

中野(Hr. / 31歳になりました)

参考文献

アンソロジー カレーライス!!
33人の著名人が、己のカレー愛を語る。
ただひたすら、カレーのことだけ。
POPEYE 844号 (2017年8月)
ポパイのカレー特集。ポパイ好きなんだよ。
第2特集のハードボイルドも良い。
ドーナツ・ホットドッグを併せた特別編集版があるので、今ならそっちを読んだほうがいいかも。

今週のリコメンド:paris match

このところ暑い日が続いている。熱中症などにはなっていませんか? ちゃんと栄養を取っていますか? 家族と話をしていますか? 実家に帰省したらカレーとか食べなさい。

こう暑いと涼しげな音楽が聴きたくなる。そういうときにparis matchのサウンドは良い。まさにアダルト・コンテンポラリー。晴れた夏の海沿いを、屋根を開けたロードスターでドライブしたくなるような曲ばかりだ。そんなparis matchのアルバムを何枚か紹介するぞ。

type III
爽やかでアップテンポな曲、特にM1:Saturday, M2:Deep Inside, M8:Asagaoが好き。
QUATTRO
M2: SUMMER BREEZEでアガったと思ったら、 M5:ANGEL, M8:潮騒のメロウな感じでやられる。
11.
最新アルバム。
変わらずオトナのPOPで、ご安心だ。

余談1:暴君ハバネロ一袋を食べきるのに一ヶ月かかり、ハバネロのことを考えるだけで冷や汗が出るほど辛いものが苦手だ。辛いものを好んで食べられる人はすごいな。マゾでは?

余談2:ドライカレーを家でよく作る。サクッと作れ、日持ちもするので、休みの日に作り置きしている。付け合せのザワークラウトもどきも一緒に作り、ご飯と併せてワンプレートにして食べると洗い物も少なく、栄養バランスも取れて最高だ。

余談3:『カレーの市民』の彫刻は、国立西洋美術館の前庭で見れます。他にも『地獄の門』や『考える人』なんかがあるぞ。『カレーの市民 アルバ』は石川県各所の他、東京、西宮、広島にあります。京都店は閉店しました。


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