初心忘るべからず

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本コラムは個人の見解であり、所属するいかなる組織の公式見解ではありません。
吹奏楽団のブログですが、吹奏楽の話はたいてい無いです。


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エイプリルフールネタ

いやだよ俺、年越しとか慌てず騒がず淡々と過ごしたいよ。

コラムのコーナー

しかれば、当流に、万能一徳の一句あり。

初心不可忘

この句、三箇条の口伝あり。

是非初心不可忘

時々初心不可忘

老後初心不可忘

この三、よくよく口伝すべし。

世阿弥『花鏡』

先日、エイプリルフールだった。俺はいつも嘘しか言わないので、今年度もエイプリルフールなぞ関係なしに嘘をついていく。甘い言葉に惑わされてはいけない。かのイヴも、蛇にそそのかされてえらい目に負うたことは、周知の事実である。

さて、新年度の始まりに際し、「初心忘るべからず、ヨシ!」と気合を入れなおす人もいようかと思う。「最初は誰でも一所懸命精進するが、慣れてくると慢心しがちになる。つねに最初の志を忘れてはならない!」と。まぁ、よくある話であるが、異世界転生ものよろしく、世阿弥が何かの気まぐれで現代に蘇ったら「麿、そういう意味で言ったつもりではないぞよ…」と嘆くことであろう。よくある、原典ではそんなこと言ってないシリーズだ(『暗黙知』も本シリーズに含まれる)。

じゃあ世阿弥はどういう意味で言ったっぽいのか、参考文献も踏まえつつさらっておこう。「うちの流派(能)に超良い言葉があって、『初心忘るべからず』、ってものだ。この初心には3つある。是非の初心、時々の初心、老後の初心だ。こいつをちゃんと後世に伝えていってくれ…」世阿弥には申し訳ないが、どうやらちゃんと伝わってない。伝わってないねぇ…

  • 是非の初心
    自分の芸が上達したかどうかを判断する〈初心〉を忘れるな。ここでいう〈初心〉は、ものごとを習い始めたころの未熟さ。それを忘れずにいることが、その後の芸の向上、上達を推し量るひとつの基準となり、ときに自分の芸が退歩していないかどうかの判断基準(※是非=現在の芸が上達するか、退歩するかを決める基準としての〈初心〉の意)になる。
  • 時々の初心
    その時々にかなった時々の〈初心〉を忘れるな。その年齢にふさわしい芸にいどむことは、その段階においては初心者であるので、やはり未熟さ、拙さがある。芸道を学び始めたころから、壮年期を経て老年に至るまで、芸態を身につけることで、芸の幅の広い役者となることができる。
  • 老後の初心
    老年期になって初めての芸にいどむ、みずみずしい心構えを忘れるな。老後の〈初心〉をつねに忘れずにいれば、過去の芸のすべてが思い出され、現在および今後のために新しく見直され、そして経験し直されるので、これまでに蓄積された芸の、単なるくり返しではすまなくなる。いのち(※若年から老後までの一生涯)には末期(終わり)があるが、芸には行き止まりが見えてはならない。

こう見てみると、芸事において自分と向き合うために特化した金言であることが分かる。就活とか所信表明とか、そういうお気持ちに万能に使えるパワワードではないことは、明らかだ。

幸いなるかな、こんなところにたどり着く多くの皆様方(あなたのことだ)においては、おそらく何らかの形で芸事に関係しているか、そうでないにしても仕事なりで技術を使っていることだろう。しからば、『初心忘るべからず』、である。

季節はすっかり春。新しい季節である。初心を忘れることなく、ぼちぼちやっていこうかなぁ、と思う今日この頃である。

併せて読みたい

指揮者迎氏による、成長に関する記事。
こちらは千利休の『守破離』について、レシピ、取扱説明書、楽譜から読み解く。

参考にしました

『世阿弥芸術論集』(田中裕校注、新潮社、1976年)

是非の初心・時々の初心・老後の初心――忘るべからず。 | ゴム報知新聞NEXT | ゴム業界の専門紙- Part 2 (gomuhouchi.com)

今週のリコメンド

猪野秀史

個人的な話だけれども、エレクトリックピアノとか、ハモンドオルガンとか、鍵盤叩いて電気を流す系の楽器の音色がすごく好みだ。聴いていてフワフワしてきて、心地よい気分になれる。そんな奏者から今回は猪野秀史さんを。

プロフィール曰く『(前略)フェンダーローズエレクトリックピアノをメインに据え、インストの作品からオルタナティヴAOR、電子音楽等、これまでに13枚の7インチシリーズはじめ様々な楽曲を発表。(中略)削ぎ落とされた音数の少ないサウンドと清廉で シュールな浮遊感、ポップと実験的音像を絶妙に合わせ持つ世界観で、幅広い層の心を揺らしながら浸透中』。



余談1: ソメイヨシノ、咲き始めたと思ったらあっという間に満開となり、あっという間に散り始め、あっという間に葉が茂り始めた。そういうところも良いんだけれど、いくら何でもピークが一瞬過ぎない?ということを、束の間の一服、陽射しの下で穏やかな風に吹かれて舞い散る桜を眺めながら、ぼんやり考えていた。風情である。

余談2: 体重が閾値を超えた。たしかに、最近は歩くことも少なくなって、慢性的に運動不足であったからなぁ… ピザ食ってうたた寝してたらそりゃ太るよな… デブでも食ってろピザ!こんなところにいられるか!俺は一人で部屋に籠るぞ! そういうわけで、Fit Boxingを再開した。昨年末、Fit Boxing 2が発売されていたので、心機一転、早速2をやっている。前作から色々と洗練されており良く、毎日続けるモチベーションが保たれるため、筋肉痛がヤバい。

余談3: ヒロシとコロナとゆるキャン△の影響か、すっかりキャンプブームの昨今である。俺も便乗してキャンプ道具を揃え、試用も兼ねてさっそくキャンプ(ソロ・ツーリング・日帰り)に行ってきた。道もキャンプ場もすげぇ混んでた。野外シーシャがすこぶる良かったので、みんなもやってみて。マルタイの棒ラーメンを持って行ったのに、箸を忘れて飯を食い損ねたので、忘れ物チェックとかちゃんとしましょうね。それから、帰り道、荷崩れして死ぬかと思ったので、積載にも気を付けましょう。家に着くまでが遠足ですからね。

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