吹奏楽団インプリメーレでは団員を大募集中です。
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この記事は、おおよそ金曜日に、団員の中野がお送りするコラムです。
なお、このコラムは個人の見解であり、所属するいかなる組織の公式見解ではありません。
最近のアップデート
大事なおしらせ
以前より告知させていただいているとおり,2020年10月10日(土)に予定されていたThe Live 2020は延期となりました。
詳細につきましては、下記のページならびにYouTubeの動画をご覧ください。
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コラムのコーナー
先週、またコラムの投稿をお休みした。このコラムをいつも読んでいただいている諸兄は既にお察しのことだと思うが、ここ数カ月の間、おれは虚無の泥濘にハマって抜け出せなくなっており、モチベーション・生命力は絞り切ったチューブのように皆無、ただ徒に酸素を消費し二酸化炭素を生産する肉塊と化していた。メシを食う気にもならず、暇つぶしに何かをすることすら苦痛。あれほど好きだった洋ドラや、読書、ゲーム、アニメすら触れる気にもならない。ベッドに寝転び、ただ現実逃避のため惰眠を貪る日々。
そのような状況を医者に伝えたところ、朝のサインバルタ、寝る前のゾルピデムに加えて、夜のミルタザピンがお薬のラインナップに加わった。いわゆるカリフォルニア・ロケットというやつだ。偉大なる皇帝ノートン一世の眠る、かの地からやってきた多段式ロケットがローンチされ、窒息寸前だったおれは第三宇宙速度で暗い泥の中から脱出できた。今のところ、ではあるけれど。頼むからチャレンジャー号みたいなことにはなってくれるなよ、と他人事みたいに思っている。
スッキリ目覚めてベッドから体を起こすことができる。溜まりに溜まった家事をこなすことができる。歯磨きをしシャワーを浴びて髭を剃り、清潔を保つことができる。ベランダに出て新鮮な空気を吸い、空を飛ぶトンボや肌寒さから秋を感じることができる。宅配ピザとuber eatsに頼らず自炊ができる。The Boysを観て面白がることができる。問題解決のためのアイデアを練ったり、論文を書くことができる。なんと健やかなることか。普通はこんなに楽なものなのか? だとしたら、これまでの息苦しい数十年は… おれの半生は… いったい何だったのか? と、拍子抜けしてしまったりしている。
もしあなたが今、何も手につかないとか、体がろくに動かないとか、全てが楽しくないとか、生きていることが苦痛でたまらないとか、きょむのあんこくに吞まれてしまったとか、そういったことで日常生活に支障をきたしているようなら病院に行った方がいい。本当に。
ともかく、そんな感じで活力を取り戻しつつあったところに、友人の焼肉さん太郎から「今日、久しぶりにメシでも食いに行かねぇか」と連絡がきた。双方、最近は調子を崩し、食欲の無い日々が続いている旨は知っていたが、どうやら焼肉さん太郎も調子が良くなったみたいだ。旨くて脂の乗った肉を食いたい。焼肉に行こう。
焼肉さん太郎もおれも、基本的にアンニュイかつアン『ウェイ』系なので、ポツリポツリと脱線しながらしょうもないことを話すことが多い。 肉を焼きつつ食べつつそして話しつつと、何かと忙しい。おかげでちょうどいい感じで間が持つ。
乾杯。彼女とは最近どうなのよ。サラダ。アルメニアとアゼルバイジャンの紛争について。タン塩。 ダニエル・クレイグのジェームズ・ボンドは『シュッ』としてる。ロース(塩)。4時ごろに目が覚めて困る。米。在宅勤務続きで汗かいてないからでありサウナとかがいいのではないか。ハラミ(タレ)。サウナ以外で12分計って見かけない。米。ピアース・ブロスナン以前のボンドってみんな胸毛濃そう。カルビ。マジで死ぬかと思った。米。キャンプというか、焚火がしたい。ハラミ(味噌)。川崎の製鉄所の火がすげぇ。米。ジェームズ・ボンドという名の鳥類学者について。バニラアイス。12分計なら時計の針を変えて耐久性を上げれば規模の経済が効く。あったかいお茶。そういうことだけ考えて生きていたい。会計。また今度、薪を燃やす会などやろう。解散。
そういえば前の職場に少年のような管理職クラスのおっちゃんがいたが、曰く、焼肉デートができる相手とはヤレる。それを聞いたときには「えぇ~? ホントでござるかぁ~?」とか怪訝な感じで返答したような覚えがある。 今考えてみれば、火で暖まり旨い肉で食欲を満たすことで野生の本能を呼び覚ます… かつ、会話が良い感じで弾むことで現代社会に適応した人間としての証明もする… 現代におけるかの行為はたしかにその二つが高度に融合したものであるので、なるほど理にかなっているのかもしれん。
とにかく、そのような肉を焼いて食うというイベントを通じて、野生と社会性という一部背反する要素の回復が証明されたというわけだ。とは言っても、いざチャンスが巡ってきたところで、肝心のジョニーは薬の影響で臥せているのだが… なにはともあれとりあえずは良かった、と思う今日この頃です。
今週のリコメンド
Jazztronik
そんなこんなで解散した後の帰り道、お気に入りのプレイリストからシャッフルで聴いていたらJazztronikのVoyageが流れてきた。体を揺らす誘惑に耐えがたく、バスの車内でノリノリ。かつて京都ロフトの上に存在したHMVの視聴コーナーで聴いたときの衝撃を思い出した。
Jazztronikは野崎良太のワンマン・プロジェクトだ。ハウスとジャズとクラシックを鍋に入れて美味しく仕上げる料理人。フロアでは踊らざるをえないのに、じっくり聴くにも耐えるような楽曲の数々。いまさら感はあるけれど、やっぱり良いものは良い。人気曲などをスタジオで採録した『Jazztronik Studio Live Best』と、映画のサントラのような『Cinematic』の二枚は個人的に分かりやすく良い感じなのでよかったらどうぞ。
余談1: エミール・シオランの言葉にいちいち感銘を受けており、つねづね彼自身や反出生主義きちんと知ろうと思っていたが、いよいよ苦しく生きていけない日々が続いたので、てはじめにシオランの解説書を読んだ。いざ読んでみたら、普段思っているようなことが述べられていた。生を徹底的に否定する思想が魅力的かつ腑に落ちる。シオランの思想が全人類にあまねく受け入れられるのは完全に人類の終わりなのでアレだが、それが全く受け入れられないという社会は、もはや人のそれではない。ウケにくいであろう思想だけれど、それが必要な人も一部に存在するという事実から、オススメはせず余談にとどめる。次は生誕の災厄にチャレンジしてみようと思う。
余談2: 今回リコメンドしたJazztronikに触れた当時、ピアノハウスが流行ってた気がする。ジブリやディズニーのキラキラアレンジがバンバン出ていたことを思い出した。最近だとKawaii Future BassやLo-Fi hiphopに似た潮流であったことだなぁ。
余談3: キャベツ太郎に「さん」は付かない。キャベツさん太郎ではない。キャベツ太郎さんと呼べ。