このコラムは毎週金曜日、中野がその場しのぎの文章をお送りする企画です。
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先日、アマゾンプライムビデオで『MR. ROBOT』の最終シーズンとなるシーズン4が公開された。このドラマのスリル… ショック… サスペンス… みたいなのが好きなので、俺は早速イッキ見して大団円を目撃した。 素晴らしい。素晴らしかったので、ネタバレは無しで紹介しようと思う。
これはハッカーの話だ
MR. ROBOTの舞台はニューヨーク。主人公はエリオット・オルダーソンだ。社会不安障害を患い、上手く人との関わりが持てないので、イマジナリーなフレンド(要するに視聴者である君だ)と話をする。ついでに言えばヤクの常習者だ。定期的にカウンセリングを受けているようなこの頃である。昼はサイバーセキュリティの会社で働いているが、夜はネット上の犯罪を暴いたりして(非合法ポルノの告発とか)ビジランテとして活動している。完全にヤバい。
ある日の深夜、顧客である世界のあらゆる産業を牛耳るコングロマリットのサーバーが激しい攻撃を受ける。会社に呼び出され、事態の収拾に当たったエリオットはギリギリで被害を食い止めることに成功するも、感染したサーバーから「fsociety」なる謎の言葉を見つける。その後、地下鉄に乗っている時に突然攻撃の犯人らしき謎の男から話しかけられたエリオットは、先日の攻撃を防いだという腕を買われてハッカーチーム「fsociety」へスカウトされる。「fsociety」の目的はコングロマリットの金融データをぶっ壊し、ありとあらゆる借金、ローンを帳消しにし、かつてない富の再分配を引き起こすことだった… 謎の男「Mr. Robot」とは何者なのか… 「fsociety」と何なのか…
これは男のためのドラマであり、それは各エピソードの原題にも表れている。例を挙げれば、s1e1『eps1.0_hellofriend.mov』(邦題『やあ君』)、s1e7『eps1.8_m1rr0r1ng.qt』(邦題『コピー』)、s4e1『401 Unauthorized』(邦題『認証失敗』)、s4e4『404 Not Found』(邦題『所在不明』)。命名規則やl33t、ステータスコードと、このドラマが実にギークでサイバーであり男のためのドラマであることがわかる。邦題の微妙さは捨て置け。
愛そして優しさがあった
登場人物は大抵こじらせが過ぎる人間たちだ。主人公はその中でも最もぶっ飛んでいる一人であるが、その他にもヤバいやつは大勢いる。昇進のためなら手段を選ばない奴、ヤクの元締め、殺し屋、裏社会の顔のオカマ… 世の中を支配してやろう、変えてやろう、と息巻いている奴らの熱量で顔が熱くなるくらいだ。
そんな中にも苦しい境遇に置かれてもなお、暖かなハートを持つ人々がいる。愛する者の為なら自らを犠牲にする人々がいる。家族愛、人類愛が特に多く、実にアメリカンである。そして、こじらせたやつらもまた、愛に生きたいのに、しがらみや性格から上手くいかずに、もがき苦しんでいる。苦しんで苦しんで、お互いに傷つけあいながらも寄り添おうとする。サイバー&サスペンスな本作であるが、皮を剥いてみればそこには、愛と優しさの物語があった。
洋ドラは良い
洋ドラが好きだ。日本だと『ウォーキング・デッド』『LOST』『24』『SHERLOCK』『ダウントン・アビー』『ゲームオブスローンズ』、遡れば『friends』『フルハウス』『刑事コロンボ』『奥様は魔女』『大草原の小さな家』… 名作ドラマは多い。今はサブスクリプションサービスが増えて、CATVを契約しなくても観られる洋ドラが増えて嬉しい限りだ。そもそも日本で配信されている時点で既にフィルタリングされており、外れがない。
何でこんなに面白いんだろうか、と不思議に思うが、おそらくは予算の関係と視聴者に媚びない姿勢、この2つだと思う。予算があれば色々な演出ができる、壮大な撮影ができる、良い俳優を出せる、CGとかも存分に使える。曰く、「(金は)力だよ、神よりゃよほど役に立つ」。媚びない姿勢については説明しすぎない(台詞にしろ何にせよ)という一点に尽きる。「君を愛している」なんてセリフ、いちいち聞かせるな恥ずかしい。演技や演出で何とかしろ。世界観を口で説明するなよ。テレビドラマだろ?視覚に訴えてくれよ。小説原作の映画化がなんかしっくりこないというのも、大抵ここに理由があるように思う(読者個人が持つ読書体験を2時間前後にまとめようというのがどだい難しいのだ)。キューブリックまでいくとやりすぎ感はあるが…
洋ドラはいいぞ。時間はかかるが、「あたり」を引いた時に得られる幸福は計り知れない。
中野(Hr. / 専業主婦)
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RECOMMEND_0 kraftwerk
世界一カッコいいジジイ集団のひとつ。日本だとYMOとか。偉大なるロボット集団。誰が言ったかコンピューターおじいちゃん。モーツァルトがAphex Twinだとしたら、彼らは太古の生きる神々である。(数年前、フェスでサカナクションのアクトを見たらまんまkraftwerk的な横並びレイアウトでやってて良かった)
RECOMMEND_1 『ゲーム・オブ・スローンズ』
ファンタジー世界を舞台とする、王座を懸けたスーパーウルトラドラマだ。近親相姦、暗殺、拷問、何でもあり。マジで登場人物が死ぬ。「アッ死んだ」「また死んだ」くらいのノリで死ぬ。登場人物の個性がすごい。酔っぱらい、ムカつくやつ、愛に生きるやつ、スパイの親玉、世間知らずのお嬢様、童貞、野蛮人、サド、マジでクソみたいなやつ、腹たって仕方ないやつ、カッコいいやつ(言うまでもなく小人のティリオン・ラニスターだ)。最初は血縁関係とか分からなくなるが、見てればそのうち分かってくるので問題はない。とっても壮大な話だし、面白いのでぜひ見てほしい。いいから見ろ。
RECOMMEND_2 『WEST WORLD』
客が欲望の赴くままに自由に行動することができる西部劇を舞台にした体験型テーマパーク、ウエストワールド。正義の保安官になって強盗を撃ち殺すも良し、ギャングになって銀行強盗を働くもよし。そこで働くのは死んでも次の日には蘇る(再起動する)ロボット…ホストたち。どっこい、そのロボットたちに異変が起こり始める。自我すら芽生え始め… 謎の黒服の男が暗躍し… 博士は独自に不審な行動をし… ウエストワールドは混乱に包まれていく。アンソニー・ホプキンス(相変わらず博士だ)、エド・ハリスもがっつり出演。
RECOMMEND_3 『TRUE DETECTIVE』
刑事モノ。時間、人との関係性の演出が秀逸なシリーズ。マシュー・マコノヒー、ウディ・ハレルソンのダブル主演の演技がすごい。もちろんサスペンス要素もしっかりしている。シーズンごとに話が終わり、別シーズンでは全く別の場所、全く別の登場人物、全く別の事件であるので、洋ドラにありがちな「いつまでも話を引きずって終わらないどころかダレてくる」心配をする必要が無く、オススメ。っていうか、紹介してるのHBOばっかりやな…
余談1:渋谷で時間が余ったので、道玄坂、百軒店商店街のミッケラーで昼間からビールを決め込む。しかしこの土地、マジでラブホテルとかアダルトグッズ屋、風俗店が多く、飲食店も多いので全体的に人の欲が集まっておりソドム感あるな。エキサイティングスペースって何にエキサイティングするんですかね… バーフバリとか? 百軒店の店舗比率とか知りたい。
余談2:昭和は遠くなりにけり、と言うが、時代は令和である。『ヘルス 平成女学院』の看板に、よもや時代を感じることになるとは思わなかった。次の元号になったとき、まだ屋号が変わっていなかったらすごい。
余談3:お散歩、常に新しい発見や閃きがあり、楽しいよね。哲学の道も偉い先生のお散歩コースであったことからその名が付けられたと言うが、クールなお散歩コースはクールな人生に不可欠だと思う。