我が愛しきゲーム音楽

人生はゲームよ。
休んだり戻ったりも大事よ

『MOTHER』スノーマンの町の女の子

先日、ナムコの『R4 -RIDGE RACER TYPE 4-』が発売20週年を迎えた。このレーシングゲームはスゴい。20世紀でも最高峰の映像美、それまでのレーシングゲームにはあまり見られなかった物語性の充実、やりこみ要素。そして何より、音楽が良い。ゲームは昨年末に発売されたプレイステーションクラシックにも収録されているぞ。そして、20周年を記念してRemix & Remaster CDがSweepRecordから発売された。今聴いても全く色褪せず素晴らしい。こちらも是非。

ビデオゲームを昔ほど遊ばなくなった。コンシューマー機を触らなくなって久しく、専らPCで遊んでいる。というか、Steamのセールで開発(=購入)して満足してしまっており、時折年齢を重ねた悲哀を感じる。とはいうものの、ゲームは大好きだ。今回は、そんなゲームを飾る音楽について書いていこうと思う。

背景の音楽

人類が発生しグレートジャーニーを経て幾星霜、文明の発展と共に娯楽は発展してきた。射的、ダイス、カード、チェス、将棋、碁、etc…。そしてコンピューターの発展の一つの結果として、ビデオゲームが発明される。

ビデオゲームの歴史はさておき、大昔のゲームには効果音すら無かった。いわんやBGMをば。そして、基盤が進化し音を出せるようになったが、まだSEだけだった。BGMっぽいのが出てきたのが70年代後半である。そういえばYMOのデビューアルバム『Yellow Magic Orchestra』にサーカスとかインベーダーゲームとかが入っているが、これの発売が1978年だ。そういう時代だ。

ようやく1980年代に入り、ファミコンとかの時代になる。ここにきてようやくBGM付きのビデオゲームが家庭に普及し始める。といっても、いわゆる8bitのピコピコ音ではあるが… この頃のゲーム音楽は、あくまでゲームの背景のためのものではあったが、極めて印象に残る音楽も中にはあったりした。マリオブラザーズの地上BGM、ドラゴンクエストやファイナルファンタジーのメインテーマなんかがそれだ。

少し話はそれるが、Chiptuneという音楽ジャンルもある。ジャンル論を始めると沼にハマるか戦争になるので細かいことはさておき、要はこのピコピコ音を使って作った楽曲だ。コアなトラックメーカーは、販売されているROMをハックして格納されている音源を使用して音楽を作り、ゲームボーイやファミコンで音楽を鳴らしている。ギークここに極まれり。有名なアーティストとしてはYMCKなんかが挙げられる。シンプルながらも何故だか心地がよい。一度も聴いたことが無い方は是非聴いてみて欲しい。

そして作品へ…

その後、スーパーファミコン・メガドライブ、N64・PS・SS、GC・PS2・DC・XBOXと、技術の進歩とともにクオリティの高い音を出せるようになり、ゲームの添え物でしかなかったゲーム音楽が一つの作品として独立できるだけのパワーと世界観を得た。

ゲームタイトルの大小に関わらず、昨今はオリジナル・サウンドトラックも併せて発売されることも多い。ゲーム内に収録されていないにも関わらず限定でOSTに入っているという楽曲もままある。某アイドルプロデュースゲーに至っては各アイドルのオリジナルがどんどん出てきているような状況だ。もはやゲーム音楽がゲームという枠組みを越え、単品で存在している。

『題名の無い音楽会』でもゲーム音楽特集が組まれたりしているし、ゲーム音楽を専門とするバンドやオーケストラもかなり増えてきた。ゲーム音楽はもはや一大要素として認知されている。小さい頃からビデオゲームに親しんできた世代がオトナになり、自分たちが愛したゲームの音楽を聴きたい・演奏したいという欲求が巷に溢れている。

ゲームのシーンに合った音楽を製作者は当てる。しかも、ゲームで覚えた感情と一緒にそのゲームのBGMが記憶されているのだから、耳にした時にその感情が想起される。だから冒険の書が消えた音楽を聴けばゾッとするし、敵に見つかって隠れているときの音楽はドキドキする。そういうものでしょう? 故に、ゲーム音楽は非常に強く、我々の記憶に残りやすいのだ。

そして名作ゲームはよく売れているので皆知っており、共有がしやすい。初対面で会話に困っても、お互いがゲーム好きでFF Vをやったことがあれば「『ビッグブリッヂの死闘』は良い」「なんだっけそれ」「あのギルガメッシュのテーマ曲の…」「あれは良いよな!」となる可能性が高い。これが例えば『papalon』だと「なにそれマカロン?っていうかSquarepusherって誰?」となりそうなものだ。故にゲーム音楽は非常に強く、アッパーのループが発生する。

とはいえ、我々は吹奏楽集団である。ゲームだけに留まらず、映画やドラマから持ってきた「シーンが既にある」「既に感情が乗っかっている」音楽も演ることも多い。オリジナル作品であっても、ワクワクしたりドキドキするような、そういう感情に訴える音楽を奏でられたらいいなぁ、なんて思う今日このごろ。

蛇足|サガフロンティア2という名作

『R4 -RIDGE RACER TYPE 4-』が名作であり音楽が最高であることは確定的に明らかであるが、もう一つ名作で音楽が印象的なゲームがあった。『サガフロンティア2』だ。

かつてのSQUAREといえば植松さん(FFシリーズ)を筆頭に、伊藤さん(SAGAシリーズ)、光田さん(クロノシリーズ)と大御所コンポーザーがいた。そしてそこに名前を連ねるのがサガフロンティア2の音楽を担当した浜鍋さんだ。

サガシリーズといえばイトケンさんが手がけた名曲の数々が有名だ。『決戦!サルーイン』『七英雄バトル』『四魔貴族バトル1』『四魔貴族バトル2』『ラストバトル』あたりは鉄板だろう。しかし、あえてのサガフロ2である。

サガフロ2は人を選ぶサガシリーズの中でも人を選ぶゲームかもしれない。初見では大抵終盤か最後で詰む難易度設定だし、システムの説明も殆ど無い。世界観や人間関係もややこしい。イラストも水彩画のようになった。そして何より音楽が浜鍋さんになり、それまでのイトケンサウンドから大きく変わった。だが、それでもツボにはまれば最高のゲームの一つになりうるポテンシャルを持っている。

このゲーム内の音楽は、ほんの数種類だけのテーマが、戦闘・ダンジョン・街といった様々なシーンでアレンジされて展開されていく。サガフロ2は表から裏から歴史を紡いでいくゲームであるが、世代が進むにつれ単調だった音楽も段々と重厚になっていく。ただでさえ素晴らしいストーリーを音楽がしっかりと補強するという実にスイートな関係になっている。このゲーム音楽に限っていえば、OSTなどではなく、是非実際にゲームをやりながら音楽を聴いてほしい。

それにしても、1999年という年は本当に豊作だったことであるなぁ。サガフロ2をはじめ、ヴァルキリープロファイル、スマブラ、ポケモン金・銀、シーマン、エースコンバット3、スペースチャンネル5、どこでもいっしょ、グランツーリスモ2、モンスターファーム2… 嗚呼懐かしき日々。何はともあれ、積んでいるゲームを崩さねば。

中野(30代・Hr.・男性・積みゲーマー)

次回:タイガーをあなたの車に

参考音源

余談1:「とはいえ、休みすぎ・戻りすぎも考えものだ」と筆者は語る。

余談2: Chiptuneは正弦波・三角波・矩形波といった極めてシンプルな音、かつ音源数の制限という制約があるところに魅力があるのかなぁ、なんて思う。特に音色が好きだ。ホルンという倍音マシマシの楽器、吹奏楽バンドという音の数の多さと比較すると、ミニマルの極みである。好みが極端なんだなぁ。

余談3:とまぁこんなことを書いていたら、E3で『CYBERPUNK 2077』のローンチ日時とPVが発表された。ヤバい。しかもキアヌ・リーブスが出てきた。「キアヌ・イクォール・サイバーパンク……」と逆噴射先生も言っている。ヤバ過ぎる。予約した。

余談4:一番好きなゲームはTES V: Skyrim。次点でFallout 3。


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