燈火可親

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本コラムは団員の中野がきまぐれに金曜日にお送りするコラムです。
内容はすべて個人の見解であり、著者が所属するいかなる組織の公式見解ではありません。
なお、吹奏楽団のブログではありますが、話題がノンジャンルである点についてはご容赦ください。


THE LIVE 2021 「We are the B.A.N.D.」

  • 日程: 2021年10月9日(土)
  • 開場: 13:00 ※時間変更の可能性あり
  • 開演: 13:30 ※時間変更の可能性あり
  • 会場: 伊丹アイフォニックホール(〒664-0895 兵庫県伊丹市宮ノ前1-3-30)
  • 入場無料(予約制

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コラムのコーナー

時秋積雨霽

新涼入郊墟

燈火稍可親

簡編可卷舒

韓愈「符読書城南」

先日、気温がグッと下がった。オホーツク海気団と小笠原気団の間に形成された秋雨前線は、冷気を伴った雨をしとしとと降らせる。あまりの朝の冷え込みに、しばらく布団から出られなかった。少し前までは、部屋の気温が40℃を超える日が続き、エアコンもあまりの暑さに効かず、このままでは熱中症になってしまう、と思っていたのに。秋だ。

気が付けば、随分と夜も長くなった。急な冷え込みで体調を崩しそうになりつつも、随分と過ごしやすい夜だ。何かをしながら、ゆったりと家で過ごすにはうってつけの季節だ。

とくあきにして積雨せきうれ、新涼しんりょう郊墟こうきょる。灯火とうかようやしたしむべく、簡編かんぺん巻舒けんじょすべし。秋、ろうそくを灯して読書をするのに最高だよね、ということを韓愈が言っている。

書。活字離れが叫ばれて久しい。己が身を顧みてみると、隙間の時間で膨大なTwitterのログを読み、バイク海苔が必死にバイク以外の雑談をするスレの新着を読み、feedlyでニュースやブログを読み、ラボで論文を読む。割と文章を読んでいるのでは?(ついでに言えば些細ではあるけれど、こうして記事も書いている。)とはいえ、インターネット経由でcharを読むことはあれど、活版の字、即ち活字を読まなくなって久しい。本当に、近頃はめっきり紙の本を読まなくなった。

我々はある側面で切ってみると、物語を貪って生きている。事実/虚構、具体/抽象、文字、声、音といった媒体を問わず。誰しも、何かしらの流れの中で物語を咀嚼し、同時に物語を紡ぎつつ、毎日を過ごしている。あるいは大なり小なり、それは歴史と言えるかもしれない。そういう意味で、小説やルポタージュは極上の料理だ。

世の中は発展し、きれいな映像を、それもあたかも自分がそこにいるように体験できるゲームの形ですら、容易に手を出せるようになってきた。しかし、想像力を使って楽しむ、という側面では未だに小説に勝るものは無い(と思う)。想像は次元を超えることができる。どれほど超次元的な描写であろうと、あたかも自分が体感しているように。かの葦の一節の後でパスカル曰く、『われわれが立ち上がらねばならないのはまさにそこからであって、われわれが満たすことのできない時間や空間からではない』

最近は、碌な時間を過ごしていないと思うことが多々ある。暇があればただ暇を埋めるためだけの時間。大局的に見れば延々と同じことを繰り返すゲームをして「つまらぬ」と嘆き、大して面白みも感動もない動画をみて「つまらぬ」と嘆き。暇と退屈の中で溺死してしまいそうな日々だ。

閑話休題。先日、BLACK LAGOONの新刊を買いに本屋へ行った際、機龍警察シリーズの最新刊『白骨街道』を見かけたので一緒に買った。久しぶりに小説を読んだ気がする。どうも以前と比べて、小説を読むにしても、こうして文章を書くにしても、始めるまでに必要なエネルギーが増した気がする。歳のせいか。昔はコンテンツを貪るように漁っていたのに。重い腰をようやく上げて読み始め、気が付けば没入し、あっという間に読み終わってしまった。やはり小説は良い。

機龍警察を知っているか?月村了衛が書く、警察SFミステリもののシリーズだ。兵器としてのパワードスーツ(機甲兵装)が普及した近未来の世界で、新型機甲兵装「龍機兵」を擁する警視庁特捜部の活躍を描く。早い話がパトレイバーであり、劇パト2から更にシリアス重点すると、多分こうなる。ドチャクソ重い事情を抱えたそれぞれの登場人物が織りなす人間模様。魑魅魍魎が跋扈し、縦割り社会の中で軋む音が聞こえる。滅茶苦茶面白いシリーズだ。案の定、白骨街道も面白かった。

『紙の本を買いなよ』といっていたのは、PSYCHO-PASSの槙島だったか。あらゆるものがデジタル化されつつある世の中で、一つの身体性を持った行為としての読書。自身のコンディションのチューニング。

そういうわけで、近頃は、夜、一日の終わりに、ろうそくを灯して、シーシャのセッティングをして、心地よい音楽を流して、また一作目から機龍警察シリーズを読み返している。そうして、失われた想像力や心の機微を取り戻しつつある。

テーブルの上にはうんざりするほど積まれた本がある。どうせ外出も推奨されない昨今だ、どうせなら徹底的に読書に溺れる秋にしようぜ、と思う今日この頃である。


今週のリコメンド

Choro Club

ARIA(あるいはAQUA)という漫画を知っているか?アニメにもなっており、その音楽が最高なのは良く知られているところである。そして、その音楽担当がショーロクラブだ。

笹子重治(アコースティック・ギター)、秋岡欧(バンドリン)、沢田穣治(コントラバス)の3人によって89年に結成された弦楽ユニット。

ゆったりと本を読む後ろで流しておく音楽として、これ以上はなかなかない。

機龍警察



余談1: 家族が医療従事者である。伝え聞く話だけでも、ガチでヤバい状況なのがひしひしと伝わってくる。

余談2: 気が付けばもう9月。早いものです。グッと冷えますが風邪などひかぬようにね。

余談3: Effective Pythonの第2版を買ったので読んでいる。やはりこれもこれで面白いものである。

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