いのちだいじに

このコラムは毎週金曜日、中野がその場しのぎの文章をお送りする企画です。
Supported by 吹奏楽団インプリメーレ。

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安全第一 品質第二 生産第三

USスチール スローガン
エルバート・ヘンリー・ゲーリーによる

先日、Netflixで『バーニング・オーシャン』を観た。数年前、映画館で予告を見て、観たいと思っていたもののタイミングが合わずに観ることができなかった映画だ。海上石油プラント火災からの脱出という映画だ。面白かった。ジャンルとしてはパニックムービーに分類されている。おれは火災のシーンで「めちゃめちゃ金かかってるなコレ」と思った。なんのこっちゃない、監督が『バトルシップ』『ローン・サバイバー』のピーター・バーグだ。安心して観れる、な?

そんな感じの映画であるが、脱出シーケンスが不要とまで思えるほど、事故までの経緯が面白い。クライアントが「そらあかんで」ということをやる。パニック映画というよりは贅沢な安全教導ビデオだ。今日は安全について書こうと思う。COVID-19とか流行ってるし。

そのルールは誰のためのモノ?

人類の幸福のことを考えれば、皆が怪我や病気をすることなく、健康に暮らしていける環境が大切だ。つまり、暮らしには安全への要求があるわけだ。わかるね?

引用した『安全第一 品質第二 生産第三』、特に安全第一の部分が有名ではあるけれども、これはもともと『生産第一 品質第二 安全第三』だった。不景気のあおりを受け、劣悪な環境での長時間労働が蔓延し、労働災害が頻発していたのが20世紀初頭のアメリカだ。そんな状況を見た、かの国の(というか世界有数の)製鉄会社だったUSスチールの社長、エルバート・ヘンリー・ゲーリーが「それじゃ人としていかんでしょ」といってスローガンを改めたそうな。結果、労災は急減。世界中にこの標語が広がった、というわけだ。みんなもっとエルに感謝して。

とはいえ、安全第一と声高に言ったり、お札のように壁に貼りだしたりすれば安全になるものではない。一人一人が、安全を意識して生活すること、これがだいじだ。とはいえ、「こっちの方が安全だ」「いや違うこうだ」「それはやりすぎだし仕事にならん」「危なすぎワロタ」と言って、めいめい違うことをしていたら交通事故は起きるし、森は焼け、病気が地上を覆いつくすことになるだろう… ということでルールが存在する。

ルールを守っていれば安全か? 否。だが、少なくともそれが制定されたときに予期された事故とかは減らすことができるだろう。ちゃんと前を見て歩く、ポケットに手を入れて歩かない、歩行者が道を渡るときには横断歩道を渡る、横断歩道を渡ろうとしている人がいたらクルマは止まる、決められた積載重量を守る、高電圧の装置は分解しない、揮発性の有害物質などを扱う際にはドラフトチャンバーの中で作業する、フォークリフトの上に積み上げたパレットの上で電球の交換作業をしない、過度な長時間労働をしない、エトセトラエトセトラ。ルールにも、小集団のものから、会社組織、国家、世界のレベルのモノまでいろいろある。ここでいう国家レベルのやつが法律とかなわけだな。

どうしても品質や生産という(何事においても当てはまるので、適宜読み替えてください。移動だったら所要時間とか費用とか)分かりやすい指標に流されて安全はおざなりにされがちだ。一方で、安全を追求しすぎるばかりに、あまりにも品質や生産が犠牲にされていることもある。何事もバランスが大事だ。

安全のために我々ができること

COVID-19 a.k.a. 新型コロナウイルスの感染が拡大している。各種イベントの中止や延期のニュースが続々と入ってきている。おれも行こうと思っていた美術展のイベントが急遽中止になりがっかりしている。残念なことだし、関係各位におかれましては大変だと思うけれど、こんな時だし、仕方あるまい。

いたずらに不安を煽っても仕方がない。過剰に反応しすぎるのも良くない。根拠のない予防策や治療法を試すのは研究者にまかせておけ。我々はただ淡々と、どこまでリスクが許容できるのかという線引きをして、その活動の中で自分の身を守るためにできることをやっていくしかあるまい。さいわいなるかな、厚生労働省がわれわれのためのQ&Aとか頑張って用意してくれているので、わかんないことは自分で読んで学んでください。「厚生労働省?そんなもん信用できんわ!」という御仁は日々投稿されている論文を追っかけてください、どうぞどうぞ。新しく分かったことがあったらソース付きでこっそり教えてください。

つまるところ、しっかり手洗いうがいをするとか、栄養をしっかり摂るとか、早寝早起きをするとか、睡眠をたっぷりとるとか、不特定多数の人が集まる所に行かない(あるいは催さない)とか、だ。っていうか、いわゆる『風邪』の原因の一つは(新型ではない)コロナウイルスであるということを我々は思い出すべきなのだ。例年に比べてインフルエンザの感染者が激減しているという報告もあるので、感染防止のために個人レベルでやるべきことは、きっとできているんだと思う。そして、体調が悪くなったら、マスクをして病院へ行こう。

今日も一日、ご安全に。

中野(Hr. / 花粉症)

RECOMMEND_01: バーニング・オーシャン

原題『Deepwater Horizen』。2010年メキシコ湾原油流出事故をモチーフとした災害パニック映画である。『安全第一 品質第二 生産第三』という標語を地で行く映画だった。

RECOMMEND_02: バトルシップ

#男の子ってこういうのが好きなんでしょ
大好きだ。ド迫力、戦艦、宇宙人、浅野忠信、チキンブリトー。

なお、その年の最低な映画を決めるゴールデン・ラズベリー賞に6部門ノミネート、最低助演女優賞受賞。

RECOMMEND_03: kiki vivi lily

以前、山梨県立美術館へドライブに行った際に、spotifyでランダムに流していて、すごく良かったのがkiki vivi lilyの『カフェイン中毒』だ。恋する乙女ではないけれども、こういう歌は良い。

90年生まれ、福岡出身のシンガー・ソングライター。スウィートでポップな歌声、それでいて、サウンドはすげぇしっかりしていてびっくらこいた。富田恵一とかWONKとかSweet Williamとか絡んでるのな。



余談1: 火之要慎のお札がAmazonで売ってた。それでいいのか?

余談2: おれにとっては、COVED-19よりスギ花粉の方が今そこにある、差し迫った危機なのだ。マスクが売り切れなのは全国のスギ花粉症持ちにとって致命的な損傷を与える可能性がある。毎年、すでにマスクを持っていることを忘れていて買い足しており過剰在庫となっていたマスクがあり、おれは助かっているが。 感染を広げないという意味ではマスクに効果はあると思うけど、予防という観点では効果薄そうな気がするが? とりあえずウイルスは全スルーだけど花粉は防ぎます!みたいなマスクが待ち望まれますね。

余談3: スペイン風邪の時代と比較すれば、衛生状態は良くなったものの、より多くの人が、より広い範囲に、より速く移動するようになっている今日この頃なので、感染者は多いだろうなぁ、と思う。時代は進歩しているのだ。良きにつけ悪しきにつけ。「おれだけは大丈夫だ」というのはモンスターパニックムービーでやられるパターンなので、「おれはもうだめだ」の精神でやっていきたい。

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