京都、伝統と革新

予定を変更してお送りしております。

伝統は確かに大切だとは思いますよ
伝統になるくらい長い間受け継がれてきたことだから
それなりの理由があるのでしょう

何でもかんでも変えればいいってものでもないけど
ただ守る為だけに守る伝統は僕は嫌いです
それじゃ固執だ

森薫『エマ』
(2巻よりウィリアム)

先日、バンドの練習やショパンの事情などがあり、京都の実家へ帰省した。土曜日の午前のスケジュールが空いており、ちょうどよい頃合いでもあったので、紅葉狩りに行くことにした。

さて、京都で紅葉狩りどこへ行くかという問題。三千院、瑠璃光院、圓光寺、貴船神社、北野天満宮、御所、二条城、嵐山、天龍寺、仁和寺、龍安寺、妙心寺、哲学の道、法然院、永観堂、南禅寺、清水寺、東寺、東福寺…。挙げ始めればキリがない。というか、紅葉はどこで見ても基本的にきれいなものであり、わざわざ京都に見に来なくとも… とは思う。とはいえ、典型的な日本らしい風景がギュッと圧縮され、色々と見られるのはたしかに魅力的ではあるよな、とも思う。

散歩程度の距離かつちょうど紅葉が見頃なところ、ということで天神さん、即ち北野天満宮に行くことにした。以前、夏に行ったときも青もみじがキレイだったので… 北野天満宮では、2019年12月8日(日)まで、『もみじ苑』を公開している。また、夜間はライトアップもやっているようだ。最終日がこの記事の公開の2日後なので、急遽予定を変更してお送りしている次第だ。

支度をして家を出ようとした矢先にTVから聞こえてくる「現在、紅葉が見頃を迎えている北野天満宮から生中継です!」の声。神も仏もいねぇな、道真公!案の定、人は多かった。紅葉の写真は下の方にまとめて貼っておきます。

行って初めて知ったのだが、『KYOTO JAPAN FESTIVAL 2019』というのも同時開催されている。このイベントはここ数年、北野天満宮でこの時期に開催されている現代文化やサブカルチャーとのコラボレーションイベントのようだ。昨年は乃木坂48や刀剣乱舞ともコラボしていた様子。そして、今年は初音ミクとのコラボレーションであった。

写真はもみじ苑内で飾られていた、Rellaさんによるイラスト『現世』。
対になる『常世』をはじめ、イベント会場となっている施設内では様々なイラストレーター・絵師によるコラボ絵が飾られているようだ。

一通り見て回った後、道行くおっちゃんが、萌え絵を見て「なんや、こんなんやってんのか」と苦虫を噛み潰したような顔をしていた。まぁ、気持ちは分からないでもない。個人的には否定も肯定もできない。今回は、そのときにふと思った伝統と革新について書いてみようと思う。

伝統と革新

言うまでもなく、京都は長年、歴史を重ねてきた都市だ。大規模工事の前には発掘が行われ、古墳時代の竪穴や平安時代の器などが平気で出てくる。あまりにもそのような歴史を重ねた人工物が自然に存在しているので、好きで来ている人よりも住んでいる人の方が無知であったりする。

北野天満宮の『もみじ苑』は『御土居』という史跡の境界にある。天下統一を成し遂げた豊臣秀吉が、長い戦乱で荒れ果てた京都の都市改造の一環として外敵の来襲に備える防塁と、鴨川の氾濫から市街を守る堤防として、天正19年(1591)に築いた土塁だ。そして、この土塁の内側・外側を洛内・洛外とし、鞍馬口とか丹波口とかの出入り口を作ったので、その名前が残っている。ちょっと前にブラタモリでやってた。

ところで、京都の人は住んでいる場所でカーストがあるだの、イケズだの、言い方が遠回しだの、ぶぶ漬けだの、色々と言われることがある。冗談みたいな話だが、あれは半分正解で半分間違いだ。あれは長年京都に住まう血族の末裔や高貴な方々のミームが伝播した結果、生まれてきた一つの処世術なのだろう。

歴史の背景にある流れ、またその分水嶺や消失点、残滓は至るところで観察ができる。それは目に見えるもの、見えないもの、色々ある。しかしそれも、観察者が興味を持ち、その能力が十分あってこそ、という但し書きがつくのだが。

伝統。クラシックは強い。バッハ、ベートーベン、モーツァルト、ショパンなどは小学生でも知っている人は知っているし、流行り廃りを越えて生きながらえてきただけの質とブランドがある。また、ジャズのレジェンド達やエルヴィス、ビートルズ、カーペンターズなどはクラシックの域に達しつつある。伝統は、本人が肉体的に亡くなったとしても忘却されずに残るものだ。まだ彼らは残した作品の中に生きている。

一方で、現在この瞬間、時間は不可逆的に流れ未来へと進んでいく。もはや、社会は発展なくして存続しえない。今、これだけ地球の表面上の隅々まで億単位という人類が蠢くのも、ワットの蒸気機関やハーバー・ボッシュ法があってのことだ。今までの歴史の上に我々は立ち、それを更に洗練、革新していかなければならない。温故知新とはよく言ったものだ。クラシックを踏まえた上での、「今の科学技術で何ができるのか?」「今までの常識は打破できないのか?」という問いが新しきもの、そして発展のための第一歩を生む。常にイノベーションは過去の上に成り立つ。

何事も、衰えてしまうものだ。 クラシックでさえそうだ。祇園精舍の鐘の声、諸行無常の響きあり。 娑羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。 奢れる人も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし。 猛き者もつひにはほろびぬ、ひとへに風の前の塵に同じ、である。成長と衰退、その釣り合いが取れている稀有な状態が現状維持だ。そして成長とは良かれ悪しかれ変化することである。変化のための試行、北野天満宮においてはその表れが初音ミクだったり、乃木坂46だったり、刀剣乱舞とのコラボレーションだったりするのだろう。伝統。その上に果たして我々は何を築くのだろう?

付録|紅葉の写真

次回:南海泡沫事件が面白い
(『読書について・読んでいない本について堂々と語る方法』は日を改めて)

中野(Hr. / 洛外出身)

参考書籍

舞台はイギリス。メイドを描かせれば右に出る人のいない森薫のメイド・恋愛マンガ。
尊い…
そういえば乙嫁語りの新刊が今月出る。

今週のリコメンド:sasakure. UK

初音ミク。日本におけるボーカロイドの火付け役だ。正直なところ、個人的に、ボーカロイドというのはイマイチ、グッと来ない。ボーカロイドを使った楽曲でグッと来るのは裏のリフが素晴らしいとか、ノリがたまらないとか、そういうのが多い気がする。HAL9000の歌うデイジーベルとかそういったのは好きなんだけどね… 

話は変わるが、BMSという文化がある。現在の音楽ゲームのグランドマザーとも言えるBEATMANIAの同人版である。この文化からメジャーデビューしたアーティストや作曲家も多い。

ボーカロイドとBMS、2つの集合のベン図を描いた時、個人的にピンとくるのが今回紹介するsasakure. UKさんだ。ささくれPとしても知られている。懐かしい人もおられるかもしれない。この機会にひたってはいかがだろうか。

X (7鍵版)
個人的にsasakure. UKといえばこれ。
楽曲としても素晴らしいけれど、BMSとしてのラス殺し、コレが好き。
是非ノート付きで見て欲しい。
*ハロー、プラネット。 feat. 初音ミク
ボーカロイド、8bit音源との相性はすげぇ良いと思う。
10周年を記念した『2019: Rewake』版もあるぞ。
というか、もう10年か。そりゃ俺も30代になるわな。
深海のリトルクライ feat. 土岐麻子
好きな歌手と好きなコンポーザーがコラボするとどうなる…?
最高になるな?

余談1:紅葉狩りついでに、京都の奇店の一つ『チャーミングチャーハン』に行ってきた。日和って炒飯(炒飯付き)ではなく普通に味噌ラーメン(炒飯付き)を頼んでしまった。炒飯はいわゆる一つのヤキメシの完成形といった感じでたいへん美味しかったです。

余談2:前回、ブログの書き方ことはじめで「このようにして書くのじゃぞ」と書いた。先週末、THE LIVE 2020に向けた初練習に参加したら、練習報告担当じゃんけんで勝って執筆を担当することになった。五十六元帥の『やってみせ~』を地で行っている。我ながら、ヒキの良さにビビる。今年はリゼロのフリーズ(約1/200,000と予想される。累計試行は8,000回転程度)も引いたりしたので、これは何かあるかもしれないと、年末ジャンボミニをちょっとだけ買った。

余談3:鎮座DOPENESS、大麻所持の疑いで逮捕、告訴されたってね。何故だか笑ってしまったわ。

シェア: