ぼくらが旅に出る理由

世界は1冊の本だ。旅をしない人々は本を1ページしか読んでいないのと一緒だ。

アウグスティヌス
(ラテン教父)

先日、 日頃からお世話になっている、学生時代から付き合いのある先輩(兼師匠)が結婚式を挙げた。ご招待いただいたので参列した。会場は宮崎県。自宅周辺の200km圏内で大抵の用事は済んでしまうので、プライベートで遠路遥々どこかへ行くということは滅多に無い。200kmが遠いか近いか、ということについては、個々人に判断を委ねようと思う。ということで、而立にして初めて九州の大地を踏むことになった。

僕は友達が少ない。大抵、どこかへ行く時は一人であり、今回も変わらず一人旅である。一人旅は自由気ままにアレコレできるのが魅力であり、人の顔色を伺いながら生きていくことが身体に染み付いてしまっている身としては、これ以上のない気楽さである。初めて九州に行くのだからと、せっかくなので福岡→宮崎(結婚式)→熊本(阿蘇)→鹿児島(桜島)の九州縦断旅行を計画した。

今回は、この旅の顛末と、旅について話をしよう。

【蛇足】九州への旅

九州への旅は波乱に満ちたスタートであった。「今日は博多を堪能したいし、ちょっと昼寝でもするか」と昼寝をしたのが間違いであった。起きたのが16時50分。フライト予定時刻が17時45分。空港までは車で40分強(googlemap調べ)。今年一番の「やべぇ!」という声とともに起き上がり、ダメ元で空港へ向かった(ご参考までに、国内線の場合でフライト20~30分前(国際線だと60分前)にチェックイン締切、15分前には保安検査通過、10分前には搭乗口待機が基本です)。

空港についたのが17時30分過ぎ。たいへん恐縮かつ焦った装いでカウンターに行ったら、「今回だけは許したろ」と特別にチェックインさせていただいた。手荷物検査も何事もなく通過、どうにかフライトには間に合った。航空会社の方々には足向けて寝られんな。皆様、空港へは余裕を持ってご到着ください。

機内でメールをチェックしたら鹿児島発の帰りの便が台風のため欠航決定との一報。マジか。福岡空港へ到着後、帰宅日の福岡空港発の朝イチ便の残3の空席に滑り込むことができたので一安心。ここで九州縦断旅行は断念することとなる。

夕食がてら、夜の博多散策。結局、一人でモツ鍋を食べました。その後評判を聞いていた『BEER KICHI』という立呑スタイルのビアパブに行ってみた。海外のクラフトビールの他、ハードサイダーもあったりして最高。お店で出会った眼鏡屋さんに転職するお姉さんと深夜までお喋りをし、宮崎の美味しいビアパブの話などを聞く。翌日は案の定、二日酔いになった。

一人モツ鍋。美味い。

飛行機で宮崎へ。結婚式はとっても良かったです。君に幸あれ、と願うばかりである。解散後、昨日情報をもらっていたビアパブ『Beer Market BASE』に行ったら、昨日のお姉さんがいた。ビビる。そういえば明日宮崎行くとか言ってたような気がする。隣になった豊橋でフッ化水素を作っているかっこいいメガネのお兄さんも含めて、夜遅くまでワイワイやる。ビール美味しい。翌日は案の定、二日酔いになった。

翌日、台風が近づいており、風と雨がすごいことになっていた。そういえば5月頃に沖縄に行ったときもこんな酷い天気だった。嵐を呼ぶ男と呼んでくれてもいい。レンタカーを借りて、熊本へ行く。阿蘇は良いぞ。緑と岩のコントラスト。植生。カルデラ。硫黄の香り(噴火警戒レベル2で火口付近には行けませんでした)。馬。牛馬注意の看板。ホテルへ戻って温泉にゆったり浸かる。たまらん。騒がしい宴会場の中、一人でディナーのビュッフェで馬肉の時雨煮とか、カニとか、ステーキとか、ソフトクリームとかを食べました。美味しかったです。翌日は朝が早いので、酒は飲まず、早々に寝た。えらい。翌日は大急ぎで朝ごはんを食べ、福岡に行き、レンタカーを返し、飛行機に乗って帰った。

阿蘇の草千里ヶ浜。
超でかくてカメラに収まりきらないカルデラ。
馬や人がいました。

この旅から分かることは何だろうか? まずは「旅は楽しい」ということ。教訓として、「余裕を持って行動しましょう」ということ、それから「飲み過ぎには注意しましょう」ということである。

僕らが旅に出る理由

至極簡潔に行こう。人が旅に出るのは、人が好奇心を持つが故である。己が好奇心を満たすためただ貪欲に移動するとき、その移動はより旅という概念に近づく。出張や修学旅行を思い返してみてもらいたい。確かに旅という感じは若干あるにせよ、あくまで仕事、学校行事という色を強く感じてしまうのではなかろうか。

ヒトは昔から旅をしてきた。新たな豊かな土地を求め、グレートジャーニーをアフリカから始めた結果、ハワイ諸島やフォークランド諸島までヒトは行き渡った。三蔵法師は仏教の真髄を学ぶ為、砂漠を越え山々を越え賊を避けつつ中国からインドまではるばる行った。新たな航路を見つけるためコロンブスやマゼランは大西洋を西へ向かった。カルデラを見に行く為に阿蘇に行く人あれば、大自然を体感するためにアラスカへ新婚旅行する人もいる。大抵は行きて帰りつの往復旅行であるが、片道切符となることもしばしばある。

思えば、旅をする生き物はヒトくらいなものである。鳥などは「渡り」をするが、あくまで季節ごとに住む場所を変えているだけであるし、サルやチンパンジーといった動物もあくまで縄張りの中で生きていおり、群れから追われたとしても、近場に新たな縄張りを設けたり、他の群れに入って暮らしていく。

ヒトが旅をできるのは、ヒトの持つ寛容性とコミュニケーション能力によるところが大きい。ヒトも縄張りを持たないわけではないが、「よその集団」から来た異邦人が危害を加えない者である限りは「うちの集団」は彼らをもてなすことが多い。

今では各地にレストランがあり、ホテルがあるので金銭でほとんど解決されてしまう、しかし、三蔵法師やマゼランの時代は各地で喜捨や托鉢、もてなしを受け、寝床や食料を確保していた。一方で、異邦人はその集団に情報や貴重な品を対価として与えていた。今でも、資本主義が浸透していない地域では異邦人を温かく迎えてくれる地域はあるようである。

では、下手すれば言葉も通じないような地域でどのように敵意が無いようにアピールするのか。秘訣はスマイル(0円)である。もし言葉が分かるなら、現地語で挨拶できれば百点満点だ。微笑みは万国共通の好意のシグナルであり、「いきなり殴ってくる事はなかろう」と微笑まれた方も思える。もし初めて見る余所者がしかめっ面で睨んでくるような場合、警戒度は一気にMAX、「何メンチ切ってんだコラ」「やんのかコラ」と険悪なムードになるのは想像に易い。

上手くコミュニケーションを取り、布教に執着することなく、人を攻撃することなく、ただ人の善意にあやかり補給だけしておけば、マゼランも生きて世界一周を成し遂げられたろうに、と思わずにいられない。(とはいえcivilizationとかでもスペインは大抵宗教狂いなように仕方ない部分があるのも分かる)

「かわいい子には旅をさせよ」と言う。諺として、獅子が我が子を谷へ落とすかのように厳しい体験をさせろという趣旨が強い。しかし、そこにはヒトの寛容性を知り、見知らぬ風景や文化に触れさせて好奇心を育てよ、という含蓄も含まれているのかもしれない。命短し旅せよ乙女。

【獅子奮迅】ライブ情報

我々の今年のライブまで一ヶ月を切った。着々と準備が進んでいる。概要は以下の通り。詳細については、文末のバナーから参照ください。皆様、ご都合がよろしければ是非お越しください。

【次回】演奏会の宣伝にまつわるアレコレ

中野(Hr. / 嵐を呼ぶ男)

参考文献

なぜヒトは旅をするのか(榎本知郎 著)
内容はタイトルママ。
ヒトとその他の生き物の差から、
旅ができる理由、旅の目的などを語る。
世界の屋台メシ(ジャン=フランソワ・マレ 著)
世界の屋台の写真集。
レシピも付いているぞ。

今週のリコメンド:Tomggg

大学時代の友人、ロシア人でサックス吹き兼モバイル系エンジニアのチーカマ・R・ウジントラレスさんのブログでは毎年、音楽個人的ヒット年間ベスト10をやってくれており、2016年かそのあたりのランキングに入っていた。センスいいねぇ。そこから聴き始め、ガッツリこのあたりにハマっている次第である。ロシア人なのは嘘。名前も嘘。サックスが上手くて大変お世話になったのはマジ。弊団体にも吹きに来てくんねぇかなぁ。来ねぇよなぁ。ウラジオストクは遠いもんなぁ。

キラキラ、カラフルでポップなエレクトロ。以前紹介したSnail’s Houseもそうだった。「そういうの好きねぇ」とか言われるかもしれないが、好きなものは仕方が無い。まぁ、聴いてみてよ。

余談1:博多は中洲の風俗店街はすごいと聞いていたが、実際歩いてみると、そこら中に無料案内所があり、すごい。宮崎も多かった。九州は3大欲求への訴求力がすごい。生命力を感じる。

余談2:博多ではモツ鍋を食べるか、鶏皮を食べるか、ラーメンを食べるかの3択であった。鶏皮、ラーメンがペンディングなので、またゆっくり博多へ行きたい。

余談3:「冷静に考えてみたとき、カニって美味いかね?」と思わないこともない。剥くの面倒くさくね?美味しさの要素の大部分、カニ酢じゃね?とりあえずカニカマでも食べておきます。


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